「宇宙のチアリーダー」
ダヴィッド・フーリエ監督インタビュー



Q:最初に、あなた自身について教えてください。
A:私は大学に入る 18 歳まで、フランス東部のとても小さな町で過ごしました。大学では工学を学びましたが中途退学し、映写技師になりました。何年も映写技師として働いたのですが、ある日、脚本を書こうと思い立ちました。書いた脚本を製作者に送ったところ、認められて資金提供を受けました。

Q:それはいつですか?
A: 4 年前です。

Q:それが今回上映された短編作品「宇宙のチアリーダー」ですか?
A:はい。

Q:どこで撮影したのですか?
A:パリです。

Q:初めて書いた脚本が採用されるとはすごいですね。
A:「宇宙〜」はメッセージがはっきりしていて、わかりやすい内容です。それに製作費もあまりかかりませんでしたから、製作者を見つけやすかったのでしょう。


Q:京都に住んでどのくらいになりますか?
A:半年になります。

Q:日本にはどのくらい滞在する予定ですか?
A: 9 月末までは確実にいます。ビザは 12 月まで有効ですから、もう少し長くいたいと思っています。日本語ももっとうまくなりたいし、東京にもまた来たい。

Q:なぜ日本に来たのですか?
A:パリから遠く離れているから。日本はとても神秘的で興味をそそられました。映画や本、ニュースから日本の情報は入っていましたし、パリには日本人の友達が大勢いました。ですから私なら日本人の考え方や暮らし方になじめると思いました。

Q:実際に来日してどうでした?
A:やはり私に合っていると思います (笑)。 でも以前のイメージどおりというわけにはいきませんね。

Q:偏見を感じたことはありますか?
A:あまりないですが、 1 度だけありました。スポーツクラブに入ろうとしたら外国人だからという理由で断られたんです。とてもショックを受けました。フランスではそんなことがあったら大問題になります。スポーツクラブの説明では、安全上の問題があるので日本語が話せない人はだめとのことでした。たとえば火事があった場合に、日本語の指示がわからないと困る、そんな話でした。

Q:日本語が話せたら入会できたということですか?
A:そう言っていましたが本当のところはわかりません。日本人の友達に頼んで何度か私の状況を説明する電話をしてもらったのですが……。


Q:京都では何をしているのですか?
A:脚本を書いたり、来月撮影する短編の準備をしています。京都を舞台にビデオで撮影します。お金がありませんから京都の友人たちに出演してもらいますが、主役はある程度経験のあるプロの俳優を使いたいと思っています。

Q:どのくらいの長さの作品になりますか?
A:短編です。まずは 20 分の作品を撮影しますが、そのほかに 3 本の構想があります。時間とお金があれば、それぞれ違ったスタイルで 4 本作ってみたい。実験をしてみるいい機会です。

Q:これから作る作品についてもう少し聞かせてください。たとえば「宇宙のチアリーダー」は、ある意味でかなり実験的ですね。

A:「宇宙〜」の後に、いわゆる一般的な作品を作りました。ですが、これはスタッフ 30 人の大がかりな企画で仕切るのが大変でした。私は経験もありませんし、映画学校にも行っていない。製作費も高額でした。そんなわけで楽しんで作る余裕も撮影に集中する時間もありませんでした。
そこで今度はビデオカメラでいろいろと試してみたいのです。移動しながら撮ったり、一ヶ所にカメラを固定したり、さまざまな手法を試してみたい。スタッフを 20 人使うとなれば実験的なことはできません。

Q:これから作る短編は日本語の映画ですか?
A:はい。ですが台詞はあまりありません。日本は私の国ではないのでなかなか難しいですね。それに日本をよく知っているわけではないから日本人については書けません。ですから日本の一面を描く意図はあるけれど、あまり分析するつもりはないんです。

Q:ゲイがテーマの作品ですか?
A: 1 作はそうです。あとの 3 作では、必ずしもゲイというテーマを盛り込まなくてもいいと思っています。

Q:日本で外国人として暮らした経験に基づいた作品ですか?
A:外国にこれほど長く住んだのは初めてです。ゲイをテーマにした作品は日本人と外国人の話ですから、私の経験も入っているでしょう。ですがその他の作品はアジア人どうし……日本人どうしの話です。

Q:ゲイをテーマにした脚本は異人種間の問題と関係がありますか?
A:白人が好きな日本人と日本人が好きな白人の話です。問題は、白人が日本語を話せないこと。そのためにコミュニケーションがうまく取れない。文化と言語がまったく違う人を好きになった場合に、理解しあうにはどうしたらいいかという問題を考えました。


Q:日本を離れた後の予定を聞かせてください。
A:フランスに戻って短編の編集や音入れをし、長編の脚本を書き上げて製作者を探します。それから日本語の勉強もします。いつか日本語がうまく話せるようになりたいですね。



July 2000
Original interview in English by Ed Miyamoto.