queer de pon
 

ヘッド・オン! Head On (1998年/オーストラリア)

監督:アナ・コッキノス
出演:アレックス・ディミトリアデス/ポール・カプシス/ジュリアン・ガーナー

メルボルンに住むアーリはまともな職にもつかず、ドラッグとクラブ通 い、そして行きずりの男とのセックスを繰り返している。父はそんなアーリの姿を苛立たしく思う が、アーリは一向に改めようとしないし、父が誇りに思うギリシャ系としてのアイデ ンティティに嫌悪感すら感じている。そんなアーリのやり場のない憤りを抱えてさま よう青春像を鮮烈に描き、世界中で絶賛された。オーストラリア批評家協会賞最優秀 主演男優賞、助演男優賞他多くの賞を受賞。

配給:オンリー・ハーツ


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最近のクィア映画を観ていて結構面白いな、と思ったのが、ただ単に登場人物の同性愛者としてのアイデンティティについて描いた作品ばかりでなく、民族や人種といった事柄も織り交ぜつつ一つのドラマとして完成させている点かな。なんか定番の「カミングアウトもの」ばかりじゃつまらないものね。この映画もオーストラリア社会に 生きるギリシャ移民2世であり、ゲイである青年の葛藤が描かれているんだけど、オーストラリアってマルディ・グラとかに代表されるように、ゲイであることがオープンでもいい社会のように見えるけれど、実はそうではない複雑な社会構造を持った所なんだなあ、と改めて実感した。ハッテンばかりしているモラトリアム青年の物語、と言えなくもないんだけど、そうした主人公の姿をどこか突き放したように描いているから、甘さはないし、むしろ人生の虚無感のようなものが伝わってくる。主演のアレックス・ディミトリアデスは本当にカッコいい。ちょっとした表情がかわいくてセクシーなんだよね。ギリシャの民族音楽からプライマル・スクリームまで幅広い音楽の使いかたもいいかんじ。

(北条貴志)


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この映画を見終わったとき、僕の友達が「なんか、自分を見てるようだった」って言っていた。僕も、この映画に出てきた青年となにか同じにおいを感じた。僕がはじめてギリシャに行ったのは、今から二年前の夏。やっと自分のことをゲイだって認められるようになった、ちょうどそのときだった。青いエーゲ海と白い漆喰の家々。そのころの僕は、まだゲイの世界について何も知らないイノセント・ボーイだった。一方この『ヘッド・オン』のギリシャは、白黒写 真のモノトーン調。疾走していく欲望。鋭い快楽の感覚と、切なさ、孤独、諦めの感覚。 駆けだしてしまったこの欲望は、どこまで続いていくのだろうか? 僕にとってのギリシャは、イノセントな自分と『ヘッド・オン』的な自分の境界線上に位 置し、個人的には何か生々しいものと結びついている。胸がしめつけられるように、 痛く切ない映画だった。

(亮)

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(2000/12/1更新)
 
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