queer de pon
 


映画祭の作り方
(7月)

2001年で第10回を迎える東京国際レズビアン&ゲイ映画祭は、すべてがボランティアで運営されている手作りの映画祭です。このコーナーでは、その舞台裏を、映画祭作りに必要なさまざまな作業を、実際の映画祭作りの進行に寄り添いながら毎回1つずつクローズアップしていきます。ちょうど、映画の走るシーンで俳優に並走するカメラのように、文字通 り奔走する映画祭スタッフの息遣いや表情を伝えることができれば、と思います。第10回の映画祭の予告編として、あるいは『映画祭を作る』という一つの長編大作(←ちょと大げさ)として、このコーナーを楽しんでいただければ幸いです。

<第8回:字幕をつけよう!>  

気がつけばもうすっかり夏。でも、あづぃ…なんて夏バテしている場合 じゃない! いよいよやってきました、第10回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭! ばふばふ!(←机を叩く音)。あとは映画の上映を待つばかり、というわけで、今回は待ち遠しいばかりの映画祭当日、皆さんがご覧になる映画の字幕を担当している字幕・翻訳セクションのMさん、 川波歩さん、狩野絵奈さんの登場です! 

まず、映画祭にかかわるようになったきっかけは…
「2〜3年前にウーマンズウィークエンドに行って、そこで前年の映画祭で字幕をやっていた人のワークショップで字幕ボランティアの募集を知って、面 白そうだなと思って」(Mさん)
「T女子大学のレズビアンに関するトークショーで知り合った人から誘われて」(川波さん)
「2年前に映画祭でボランティアをしていた人に誘われて」(狩野さん)

そして、字幕・翻訳セクションのお仕事の流れはというと…
「映画祭が7月開催で、台本が(配給会社から)送られてくるのが4,5月で、 その前に翻訳希望の人達を集めてワークショップを開催します」(川波さん) ちなみに台本がなかなか届かなかったり、届いた台本と映画祭当日に届いたフィルムのバージョンが違う!(←ひえ〜、顔面 蒼白…)というような苦労もたまにあるそうです。

「作品が決まってから、翻訳者ボランティアから翻訳したい作品を選んでもらったり、コーディネーターが割り振ったりして、それぞれの翻訳者が担当する作品を決めます。そして翻訳者が一定の期間で翻訳をして、その翻訳された作品をチェックして、そして字幕オペレーション(字幕を出す)の練習をして… 当日って感じですね」(Mさん)
「それぞれの翻訳者にどの作品が向いているかは、話しているとその人の性格とか分かってきて、その人の翻訳でアクション物が向いているのか、ラブロマンスが向いているのか何となく分かってくるから、できるだけその人がやって楽しめそうな作品を割り振るようにしています」(Mさん)
「翻訳占い」というわけではないけれど、やはり言葉には人となりが表れて、 人となりからその人の言葉が感じられるものなのですね。「人間は言葉で世界を分節する」って遠い昔、高校生のとき、模擬試験の現国の問題文で読んだ気がするけれど、言葉はまさにその人がどのように世界を切りとっているかということを示すもの、つまりその人の世界観が表れるものと言えるということ。 たとえ同じ文章を訳すとしても、その文末を「〜だ」にするのか「〜です」にするのか「〜だぴょん」にするのかでは全然違う世界が見えてくるということ(「だぴょん」て:笑)。そう考えると、映画祭で上映される外国語作品の字幕の後ろにいる翻訳者の存在がより近く感じられる気がします。  

で、映画祭のプログラムを見ていただければ分かるように、作品の種類同様、 さまざまな国籍の作品が集まっているのも今年の映画祭の一つの特徴かもしれま せん。なんてったって、英語、フランス語、韓国語、スペイン語、ヘブライ語、 デンマーク語、ノルウェー語…、さすが東京「国際」レズビアン&ゲイ映画祭!  (←鼻ふくらまして自慢げ)
「この映画祭の目的としてはいろんな国の映画を紹介するということなので、言語の種類によって(翻訳者がいなさそうとかいう理由で)作品を制限することはしないようにしています」(川波さん) とのことで、英語以外の言語の作品の場合には、翻訳者を探してちゃんと対応して います、さすが東京「国際」レズビアン&ゲイ映画祭! (←また鼻ふくらしまし て…)。

そして、「国際」色豊かなことはもちろんですが、何といっても「レズビアン& イ」映画祭ということで、クィア映画の翻訳として気をつけていることもありま す。
「コミュニティを知らない、自分の近くにセクシャルマイノリティがいない人だと、『ゲイ』っていうと女言葉に、『ビアン』っていうと男言葉に訳してしまっ たりすることがあるので、そういうところは直してもらったりします」(Mさん) 確かに、リアリティのある等身大のセクシャルマイノリティを描いた映画であって も、その字幕の翻訳がステレオタイプなイメージに捕らわれていたら、その映画の 魅力は観客には伝わらないということ。その意味で、上映される映画を生かすも殺すも翻訳次第ということ。

でも、だからこそ、翻訳と字幕を通して観客の皆さんにその映画の魅力が伝わり、 それが感動に変わっていくことは、本当に大きな喜びにつながるとうこと。
「すごく準備は大変なのですが、映画祭当日に字幕が出て、観客の人達の反応が直接に伝わってくるのは、映画字幕の手応えで、そういうのは楽しいです」(狩野さ ん)
「ただ翻訳しているだけだったら大変だから辞めてたと思うんだけど、私が続けているのは、当日オペレーションをやって、自分の翻訳にみんなが反応してくれて、 笑いやどよめきがあったり、あとチケットのもぎりもやったときに、会場の雰囲気が分かって、お客さんあったかくて、やっぱりお祭りの楽しさがあって、それでやみつきになったかな」(Mさん)

映画字幕では、一度にスクリーンに映し出せる文字数は最大14文字×2行で28文字。 1秒間に4文字――そんな短歌や俳句にも通じるようなストイックに制限された言葉が連なって、一つの映画の物語を生み出します。字幕・翻訳セクションスタッフ達が紡いで、繋いだ言葉達が少しでも多くの観客の皆さんの感激や感動に「翻訳」されますように…と願いつつ、さぁ、今年も映画祭の開幕です!

(井上 澄)

「代表のヒトコト」

映画祭直前、暑くて死にそうな山平です。
映画は、音と映像による芸術。外国語の作品の場合は、そこに字幕が加えられます。 お客さんが映画を見ながら「何気なく字幕を読む」ことを可能にするのは、実は映画祭ではなかなか大変。字幕の投影は、パソコンを使って、舞台裏(スクリーンの すぐ近く)でライブで操作されているのです。
私も実は、映画祭に初めてスタッフとして参加した3年前に、字幕投影の操作(オ ペレーション)をやりました。事前にビデオで練習して、当日、映画の上映と同時に 手動で一つ一つ用意された字幕を送り出して行きます。送り出すタイミングだけとはいえ、たくさんの人が見ているスクリーンなので、大変緊張しました。皆さんが見ている字幕の裏には、息を飲んでモニターに向かう字幕オペレーターと、それを見守る翻訳セクションのスタッフが常にいるのです。何卒よろしくだぴょん。

(山平 宙音)

(2001/7/18更新)

第1回 事務局の代表を決めよう!
第2回 人を集めよう!
第3回 上映作品を決めよう!
第4回 宣伝をしよう!
第5回:お金を集めよう!
第6回:パンフレットを作ろう!
第7回:チケットを作ろう&売ろう!

 

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