いきなり本題と違う話で申し訳ないのだが、私は少女時代、TV放映されていた天地茂主演の明智小五郎シリーズが大好きであった。江戸川乱歩原作に名(だけ)を借りたアヤシさ大爆発の筋立て、前後の脈絡を無視して唐突に始まるラヴシーン、ブラウン管を通
してさえわかるちゃちいセット。すべてがB級の傑作であった。そんなものを父親と一緒に見ていた私もどうかと思うが、父親も大したものであったのだなあ、と思う。
で、私は、「夢野久作の少女地獄 」を見ていて、件の「天地茂の明智小五郎」を思いだしてしまったのだった。
無理やりにこの映画を数式で表せば、
(「天地茂の明智小五郎」+「吉屋信子の花物語」+「寺山修司の田園に死す(映画
)」)÷5+夢野久作テイスト
という感じになるだろうか。自分で書いておいてなんだが、凄い数式である。ちょっと説明が必要かもしれない。
まず、舞台は上流階級の令嬢たちが集う女学校、主人公のふたりは名家の令嬢と不遇な身の上の少女、このふたりがたいへん仲が良い。しかし度を超えて仲が良いふたりを、冷厳な女教師が見とがめる。(このへんが「花物語」)
そしてなぜか不遇な少女が唐突に校長に手込めにされ、妊娠。令嬢の家も名家とはいいながら内実はフクザツ。父親は平気で芸者を自宅へ連れ込んで応接間でおっぱじめたり、病身の妻を無理やり犯すようなヤツ。(このへんが「明智小五郎」)
そのほかいろいろ人間関係が錯綜しているのだが、詳しくは書かない。まあ、諸々の事情が重なって、令嬢と不遇な少女は手に手をとりあって、校長と学校への復讐を果
たす。ラストシーンでは、荒れ果てた「狂気の国」で、校長が舞い踊り、ふたりの少女は焼身心中する。(このあたりの映像が「田園に死す」)
とまあ、こんな映画である。で、随所に唐突なラヴシーンが挿入されるのはお約束
。
だが、私は最近のAVも見たことがあるのだが、それらと比べると立派に映画として成り立っている。唐突なラヴシーンに幻惑されてはならないのだった。この映画のテーマは私が読むところ、「少女の純潔性」である。体は汚しても心は残酷なまでに潔癖、というか。んー。「少女の純潔性」じたい、言い切っちゃうといろいろいけないパラダイムであるけれど、それはとりあえず置いといて、よくできたアヤシい(←
褒めてる)映画であった。女同士の絡みは、期待したほどなかったけど。
しかし、映画の中で描かれる女子校が、私の「女子校幻想」と見事にシンクロしてしまっていた。これはちょっといちレズとしての私はまずいんじゃないか、と思う今日この頃。
(はらハリー)
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