queer de pon
  夢野久作の少女地獄 Sho-jo Jigoku(1977)

監督:小沼勝
原作:夢野久作 
出演:飛鳥裕子、小川亜佐美、絵沢萠子

ある女子高。噂になる程仲のいいアイ子と”火星さん”。だが、二人の無垢な世界は 、汚れた大人たちによって破壊されていく…。夢野文学をにっかつロマンポルノの巨匠、小沼勝が映画化したカルトな作品。

S&M 匂ひ立つ官能、新世紀エクスタシー 〜小沼勝特集上映〜 
渋谷ユーロスペースにて上映中
「夢野久作の少女地獄」
2/4〜7 15:00より、2/22〜24 17:00より、3/7〜9 13:00より各日一回上映
オフィシャル・ホームページ http://www.nifty.com/s-m/


review  review  review  review  review  review  

「折から、どうもこのレズビヤ〜ン映画ちうとしっとり細やか、さわやかソフトフォーカス系が多くて「ばか度が足らぬ !」と竹刀をぶん回しながら憤っていた鬼畜婦女子に自信をもってお薦めするのが、この『夢野久作の少女地獄』。すでに題名から軽く大気圏外にイっちゃってるので、乗り物酔いしやすい人なんかは気をつけてね。  

映画は、ここまで引っぱってきたテンションの高さに決着をつけるとしたら、こうするしかねーじゃんという監督のひらき直りが心にしみるラストの創作部分と舞台設定をのぞけば、かなりキレ具合のいい原作を忠実になぞっているので、読んで観るもよし、観てからよんでもまた一興。できれば頭の弱った友人数名と劇場にくり出して 、トルエン小さじ一杯をくわえたスーパーのビニール袋をまわしまわし鑑賞するのが、このさい正しい観客の姿勢といえるかもしれない。  
そして、小まめにつっこむ。  

あんだよ、あの白いボールはよ!(間違っても「少女の性欲」などという解釈をあたえてわイケナイ) あんだよ、この場違いに重っ苦しいベースはよ!(間違っても70年代の時代背景などを論じてわイケナイ) ていうか壁ごしに思っきし聞こえてんじゃねーかよ! ていうかその顔こえーよ! ていうかレズビヤ〜ン映画なのに、 あんで女同士でやんねえんだよ! ぷちーん!  

確かに、何年ダブったの? と聞きたくなるような女子高生を演じる新人、小川亜佐美さんに「教育」とばかりに迫るねばいセックス場面 をはじめ、やることやってるのは男女なかよしさんの組み合わせだけなので「手に汗握るま*こ対決」は全くない 。すまん。ただし同監督の作品には『レズビアンの世界−恍惚−』(1975)なんてのもあるので、直訴するなり念力を使うなりして死ぬ までにぜひ見届けていただきたい。 押忍。  

最近、古い日本のキちゃってる映画を浅草とか大森とかじゃない映画館でも割とやるようになって、周囲の強烈なイカ臭さやワンカップ摂取によるおやじの不品行等のどおーでもええ悩みから解放されたのは非常に喜ばしいことである。本シリーズの上映でも、とりあえず一定の清潔感は保ちたい……、そんな興行館側の焦りと配慮から (か?)女子専用席が有リマス。

(吉田ひなとら)


review  review  review  review  review  review

いきなり本題と違う話で申し訳ないのだが、私は少女時代、TV放映されていた天地茂主演の明智小五郎シリーズが大好きであった。江戸川乱歩原作に名(だけ)を借りたアヤシさ大爆発の筋立て、前後の脈絡を無視して唐突に始まるラヴシーン、ブラウン管を通 してさえわかるちゃちいセット。すべてがB級の傑作であった。そんなものを父親と一緒に見ていた私もどうかと思うが、父親も大したものであったのだなあ、と思う。  

で、私は、「夢野久作の少女地獄 」を見ていて、件の「天地茂の明智小五郎」を思いだしてしまったのだった。  
無理やりにこの映画を数式で表せば、

(「天地茂の明智小五郎」+「吉屋信子の花物語」+「寺山修司の田園に死す(映画 )」)÷5+夢野久作テイスト

という感じになるだろうか。自分で書いておいてなんだが、凄い数式である。ちょっと説明が必要かもしれない。  

まず、舞台は上流階級の令嬢たちが集う女学校、主人公のふたりは名家の令嬢と不遇な身の上の少女、このふたりがたいへん仲が良い。しかし度を超えて仲が良いふたりを、冷厳な女教師が見とがめる。(このへんが「花物語」)  
そしてなぜか不遇な少女が唐突に校長に手込めにされ、妊娠。令嬢の家も名家とはいいながら内実はフクザツ。父親は平気で芸者を自宅へ連れ込んで応接間でおっぱじめたり、病身の妻を無理やり犯すようなヤツ。(このへんが「明智小五郎」)  
そのほかいろいろ人間関係が錯綜しているのだが、詳しくは書かない。まあ、諸々の事情が重なって、令嬢と不遇な少女は手に手をとりあって、校長と学校への復讐を果 たす。ラストシーンでは、荒れ果てた「狂気の国」で、校長が舞い踊り、ふたりの少女は焼身心中する。(このあたりの映像が「田園に死す」)  
とまあ、こんな映画である。で、随所に唐突なラヴシーンが挿入されるのはお約束 。  

だが、私は最近のAVも見たことがあるのだが、それらと比べると立派に映画として成り立っている。唐突なラヴシーンに幻惑されてはならないのだった。この映画のテーマは私が読むところ、「少女の純潔性」である。体は汚しても心は残酷なまでに潔癖、というか。んー。「少女の純潔性」じたい、言い切っちゃうといろいろいけないパラダイムであるけれど、それはとりあえず置いといて、よくできたアヤシい(← 褒めてる)映画であった。女同士の絡みは、期待したほどなかったけど。  
しかし、映画の中で描かれる女子校が、私の「女子校幻想」と見事にシンクロしてしまっていた。これはちょっといちレズとしての私はまずいんじゃないか、と思う今日この頃。

(はらハリー)


review  review  review  review  review  review

アタシみたいなドオカマがフケノンケの青春ともいえるロマンポルノのレビューなんて書けるのかしら? そんな疑問は口には出さず殊勲な態度でこの仕事を引き受けたんけど、見てみてビックリ! 思わず興奮してしまったワ!  
まぁなんていうか、お約束通りの濡れ場・人物描写。どこを取っても某土曜ワイド劇場。貴方にもあるでしょ? 性に興味を持ち始める甘酸っぱい頃、土曜の昼下がり、お母様の目を盗んで見てしまったあの禁断の二時間。テレビの音も小さくして、廊下の足音に機敏にチャンネルを変えるあの二時間よ! そんな禁断の映画も今となっては笑いの種。はっきり言って悪いけど全てが大爆笑なのよ! 『笑うほかにすべ無し!』なのよ。  

でもでも、この『少女地獄』は、そんな型どおりの量産映画って枠には収まりきらないの! だって、県下随一の女学校のシーンと火星のシーンが繋がっているのよ?  
ロマンポルノのくせによ。フェリーニだって唖然とするわよ。ラストのセリフに至っては"校長先生さようなら。地球の皆さん、さようなら" なんて事をほざかれる始末! 全くもって予断を許さないわ! まさに地獄、これぞ地獄よ!  

オカマとしては濡れ場を見逃す訳にはいかないわね。濡れ場といっても今のAVの様なゲスな表現は一切無く、ちょうど股間にロウソク・家具など様々な物を被せて撮る、モザイク無しの濡れ場。このカメラワークに潜む奥ゆかしさには伝統芸能に接する時のような、凛とした気分にさせるわ。某相撲部屋じゃないけど。  

長々と書いてきたけど、実はこの映画の本当の魅力はそんなところには一切ないのよ。この映画の本当の魅力、それはこんな映画が世の殿方の股間を熱くしたって事実 。ただその一点のみで爆笑は保証されるわ。御覧あそばせ。

(anesan)


review  review  review  review  review  review

(2001/2/12更新)
 
backtop