queer de pon
 

ウーマン・ラブ・ウーマン IF THESE WALLS COULD TALK 2 (2000/アメリカ)

監督:ジェーン・アンダースン、マーサ・クーリッジ、アン・ヘッシュ
出演:ヴァネッサ・レッドグレイヴ、クロエ・セヴィニー、シャロン・ストーン

HBO製作のテレビ映画。アメリカ社会の中で、レズビアンのカップルがどう生きてきたかを3つの時代にわけてとりあげる。
第1話は1961年。長年連れ添ったパートナーが亡くなり、突然、親族との遺産相続問題に巻き込まれる老女の悲劇。
第2話は1971年。ウーマン・リブ全盛の時代、自分のライフスタイルと、男装したレズビアンとの恋愛の狭間で悩む女子大生の物語。
第3話は2000年。人工受精で子作りに奮闘するレズビアンカップルのコメディ。
キワモノ的な視点を避けあくまで、その時代時代の女性の立場で描かれている点に注目。

ビデオ発売:タキコーポレーション

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第1話

良いですね。この作品。おすすめです。…と、これで終わらすとスタッフの方に怒られそうなので、もうちょっと真面 目に。

3話のオムニバスの中で一番好きなのは1話目。ストーリーももちろんだけど、ヴァネッサ・レッドグレイヴがとにかく素晴らしい。ちょっとおとぼけなアビー(註:レ ッドグレイヴ扮する老女のパートナー)を優しく見つめる目、「親族ではない」というだけで起こる理不尽な状況においてのとまどい、そして大きすぎる悲しみ。見ているだけでアビーをどれだけ愛して、大事に思っていたか、痛いほど伝わってくる。特 に「長年の友人」「親友」だとウソをつかなければならない時に見せる、それをいつもいつも繰り返してきた、というせつなさとあきらめを背負った表情はすごい。これは私が出演者の中でヴァネッサが一番好みである、という事実を差し引いても絶対的に注目すべき点。プラス脇役達のリアルさが良い。みんな決して悪役ではなくて、いわゆる「普通 」「あたりまえ」の動き、反応をする。だからこそリアルでチクッと痛 い。

あ、一番好きな話だけに字数オーバー。ということで、2話目3話目は手短に。2話目は一番親近感を覚えた作品。リアルさは1話目同様、かなりの線。ダイク・バーの 客とかエッチシーンとかね。クロエ・セヴィニーのタッちゃんぶり、最高。最近スタ イル重視のオシャレ系族のおかげで肩身の狭い思いをしているタッちゃんへ捧ぐ。きっとこれを見れば涙、涙でしょう(そうか?)。しかし、ユマ・サーマンもすっかり業界色が薄くなり、さみしさを感じていた今、クロエ・セヴィニーの出現は光だ。
3話目、シャロン・ストーンのスターパワー炸裂。登場シーンからオーラを放つ。さすが。リアルさは一番低いが。でも、そのパワーのおかげであっという間にビデオ化 決定、な訳だから感謝。そのシャロンとのエッチシーン、エレンがちっとだけうらや ましい。

どの年代、どのテーマの話も共感することばかり。歳も国籍も関係なく、私達の悩みは共通 なのね…と、思わずしみじみしてしまう作品です。でもそう思わせてくれる作 品が作られた、ってことは本当にすごいこと。その他、細かい動きのおもしろさやビ デオパッケージについてなど、語りたいことは山程あるが、きっとスタッフの人に怒 られるのでこの辺で。

(iri)第9回映画祭「JAPANESE QUEER VIDEOS」にて、監督作品「chocolate」(2000)を上映 。


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第2話

誰でも何らかの言葉で、自分を、他人を規定しようとする。セクシュアリティもしかり。あなたはヘテロセクシャル、私はバイセクシャル、 彼はゲイ、などなど。たくさんの人に出会う中で、言葉によるアイデンティファイは時として必要なことかもしれない。でもあまりそ れにこだわりすぎると、出会いを逃したり、他者を理解し難くなったり、本当の自分らしさを見失うのかも。「レズビアン」で「フェミニスト」であるリンダ達は、自分らしい生き方への権利を求めているのに、他人の「自分らしさ」に寛容になるのは難しいようだ。「普通 の異性愛」が他のセクシャリティに寛容ではない態度をとるように、彼女たちレズビアンは、男装の女性を冷たい視線で見る。「自分を女だと思っているのか?」というリンダの問いに、「他人がどう思おうと、自分は自分。どうにもできない。」と答えるエイ ミー。リンダは、仲間達からの冷やかしや嫉妬の視線を感じながらも、自分をしっかり持つエミリーへの思いをつのらせる。そして、 自分らしくあることへの肯定が、他人へのあり方への不寛容につながる矛盾に気付く。今までならば、仲間と一緒に男装する女性を冷やかしの目で見ていたリンダは、新しい自分を発見し、とまどい、 そして最後には新しい自分と新しい恋を受け入れる。新しい自分を受け入れた瞬間、感情が理性を超える瞬間、それはやはりリンダとエミリーのキスシーンであり、二人の表情は美しい。

(山平 宙音)


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第3話

「甘える」と「媚びる」っていうのは少し似ていて、ワタシは時々わからなくなる。 「卑屈さ」と「恐る恐る」がブレンドされると「媚びる」になるのかなあと、第3話 「2000年」のシャロン・ストーンを見ていて思った。すごく無防備で、いい。今まで見たことのあるどの映画よりも、シャロンはかわいくて色っぽかった。なんていうのかなあ、攻撃性がまったくないのだ。かといってそれは、草食動物の穏やかさではなく、やっぱり肉食獣、大型猫族の仔が満ち足りた表 情でじゃれつくような、そんな雰囲気だ。そういえば、「媚びる」は攻撃性をあらわに含んでいる。「甘える」は……やっぱり攻撃の手段か。しかも無防備な分、余計にたちが悪いかもしれない。カラ手で闘いを挑んでくる相手に、銃やら刀は振るえないもの。受け入れて抱きしめるか、裸足で逃げ出すか、さてどうしよう。シャロン・ストーンが相手だったら……少し逃げ出したいような気もする。

(満月)


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(2000/12/1更新)
 
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