ホームドラマ SITCOM
(1998年/フランス/80分)

【監督・脚本】 フランソワ・オゾン
【撮影】 ヨリック・ルソー
【音楽】 エリック・ヌヴー
【美術】 アンジェリック・ピュロン
【出演】 エヴリーヌ・ダンドリー/マリナ・ド・ヴァン/アドリアン・ド・ヴァン/ルシア・サンチェス/フランソワ・マツトゥレ/ステファーヌ・リドー

ホームドラマ

 僕はオゾン監督の「サマードレス」や「海をみる」がとても気にいっていたので、この初長編である「ホームドラマ」も大きく期待していたのだけど、結果は何とも期待外れの間の抜けた凡作だった。

 基本的に出発点からしてつまらないよね。オゾン監督はこうした形でSMやら同性愛を全面に押し出すことが、何か目新らしさやスキャンダルなものになると思っていたのだろうか?もしそうだとしたら、相当感性が古いとしかいいようがない。キワモノっぽい設定がテンコ盛りでも、それがドラマとして機能していないのだから話にならない。いや、それ以前にキワモノとしての面白さも凄さも皆無なのだからどうしようもない。

 確かにSitcom(テレビドラマ)でこういう題材を扱えば、まあ珍しいかもしれないけれど、今どきの映画じゃこの程度のもの珍しくもなんともないし、「古くさく」「陳腐」ですらある。

 他者の介在により家庭内の波長が乱れ、回帰不能な方向へと流れていく、という点は「先輩ゲイ映画監督」パゾリーニの「テオレマ」や、ブニュエルなどの作品に共通するものを感じさせつつも、皮肉や毒気という点では足元に及ばないよね。

 もう一つゲロダサなのが音と音楽の使い方。わざと安っぽいメロドラマやサスペンスドラマのような使い方をしているんだけど、それが全然パロディになっておらず、結局は同じ安っぽさを醸し出しているだけ。

 「サマードレス」や「海をみる」で日常生活のなかに潜む狂気や毒を簡潔かつ豊かに表現したのに対し、こちらは間の抜けた「ホームドラマ以下」ですらない。次作に期待しましょか。

(北条貴志)

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