長編作品

「炎の二人」 FIRE
(1996/ディーパ・メータ/カナダ・インド/35mm/104分)

FIRE

 ニューデリーの兄夫婦の家に弟の嫁として入ってくる新妻シータ。男中心の伝統的な価値観に虐げられながら必死に家を支える兄嫁のラーダは、天真爛漫な若いシータに新鮮な魅力を感じる。浮気や禁欲の修行、あるいはポルノの闇商売に熱を上げる抑圧的な男たちの目を盗み、美しい2人の女の間に芽生える淡い感情はやがて恋の炎へと燃え上がる。

 女性の性と欲望を大胆に描いたこの作品は昨年インドでの公開時に過激な保守派のテロ強迫によって上映中止に追い込まれたが、自由開放を求めて多くの女性たちが反撃に立ち上がり、日本でもニュース番組で取り上げられるなど国際的なセンセーションを巻き起こした問題作。鮮やかな色彩と幻想的な美しいシーンとに彩られ、眠っている多くの感情や感覚を呼び覚ましてくれる。


【製作・監督・脚本】 ディーパ・メータ
 インド生まれ。ニューデリー大学で哲学を専攻した後、児童映画の脚本家として映画界に入る。1973年にカナダに移住し、「サンライズ・フィルムズ」社を設立する。その後、「The Bakery」「Travelling Light:the Phatojournarism of Dilip Mehta」などのドキュメンタリーを手がけ多くの賞に輝く。1990年に初長編「Sam & Me」を監督しカンヌ映画祭で話題になり、1992年には「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」(製作ジョージ・ルーカス)を監督する。1993年、長編2作目の「Camilla」(主演:ジェシカ・ダンディ、ブリジット・フォンダ)を監督し、「炎の2人」が長編3作目に当たる。

【撮影】 ジャイルズ・ナッテゲンズ
17歳の時から演劇活動を始める。スポーツカメラマンとしてキャリアを築いた後、映画界入りする。ディーパ・メータ監督とは「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」で初めて共に仕事をする。

【音楽】 A.R.ラーマン(映画「ボンベイ」のサウンドトラックより)
【出演】 シャバナ・アズミ、ナンディッタ・ダス、クルブシャン・カーバンダ、ジャーベッド・ジャーファリ、ランジット・チョウドリ

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監督の言葉
「炎の二人」は現代のニューデリーのある家庭内を舞台に、欲望と欲望の顕在について描いた映画です。阻まれた情熱、精神的な所有、秘密の生活、そして孤独といった事柄が内包されているのです。

 また、この映画は慣習と革新、西洋と東洋、そして精神性と物質主義との間に生じる矛盾や混乱も描き出しています。

 この映画の中で描かれる家族の物語は、現在インドで起こっている大きな変化の比喩でもあるわけです。急激な文明の進歩は慣習的な考えを持つ人々と、自由や独立を欲する若い世代との間に大きな緊張をもたらしています。

 また、長い間インド女性から剥奪されてきた慣習的な役割について、再考を施す力強い衝撃ともなりうるのです。自己犠牲や絶対的な奉仕ということは、希薄になった家族の絆や知恵や強靭さ、そして経済力という元来「男の役割」とされてきた事柄が無意味になってきたという現実の状況の中で形骸化してきているのです。

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受賞歴

・バルセロナ国際女性映画祭・観客賞
・マンハイム・ハイデルベルグ映画祭・審査員特別賞
・バンクーバー国際映画祭・観客賞

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