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プログラム98
ミシシッピの夜
(1996 USA 85' 16mm color)
監督:
アイラ・サックス
人なつっこい、でも、どことなく薄っぺらな家族の会話。時折通る車のヘッドライトに浮か
び上がる駐車場の、狭苦しい暗がりで交されるフェラチオ。ひなびた町の場末の盛り場…。
アメリカ南部の日常の時空間をたゆたうプルースト的なカメラの視線があぶり出すのは、白
人中流家庭の息子リンカーンと黒人+ベトナム人の混血青年ミンとの出会いを引き裂くアメ
リカ南部社会の現実だ。晴れたやわらかな陽差しにきらめくミシシッピの水面に2人の出会
いの映すものが、断絶した人種・階級間の架け橋へのかすかな希望だとすれば、それは同じ
「ミシシッピの夜」の闇に紛れてしまう。
自分のセクシュアリティに怯えながらも夜を貪り、昼はナイーブな愛すべき息子を演じる
リンカーンが、やがてぬくぬくとした父親の懐へ引き戻される前半。隅に追いやられた者に
唯一残された道化の役へと身を落とすミンの口ずさむ、ベトナム歌謡曲のメロディーが印象
的な後半。アイラ・サックスの初長編監督作品は、ミシシッピの夜の闇に揺れ動く欲望を、
冷たいガラスのような質感でフィルムに美しく焼き付けている。
長編の前のアンドリュー・ポーター監督『見知らぬ顔』は、親と一緒に住む少年のフラス
トレーションをユーモラスに描いた作品。長短編ともに夜の映像が冴えたプログラムだ。
(監督プロフィール)
アイラ・サックス
テネシー州メンフィス生まれ。現在はニューヨークを拠点に活動。自伝的な要素を含むこの
本作では、「異文化の壁を越えてお互いに話しかける言葉を知らない」故郷の町をドキュメ
ントしたかったと語る。「ファスビンダーの影響も大」だそうだ。
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見知らぬ顔
(1997 Australia 9' 16mm color)
監督:
アンドリュー・ポーター
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