プログラム98

フルスピード

監督:ガエル・モレル 

(1996 France 85' 35mm color)

フルスピード


疾走する青春、現代という不安な時代の生を、全速力で駆け抜けなければいけないのは、彼
ら自身、自分の内にあるどうしようもなく不安定な何かを懸命に振り切ろうとしているか
ら? 『野性の葦』でセクシュアリティの目覚めに戸惑う60年代の青春を演じたガエル・モレ
ルが長編監督デビュー作で描くのは、経済不安と町の荒廃、暴力と人種差別に揺れる90年代
フランスの、現在形の青春の不安な姿−−クァンタンはそんな地方都市郊外に生きる若者達
の生の姿を小説に書き、パリの出版社に大抜擢される。ジュリーという恋人がいる彼だが、
親友ジミーとの絆は彼女とのそれ以上に強い。そんな彼がクラブで出会ったアラブ系の少年
サミールは、彼に一途な思いを寄せ、クァンタンも彼に魅かれるが、これはあくまで友情な
のだと自分に信じこませ、サミールの愛を乱暴に拒絶する。サミールの思いに気づき、成功
に溺れるクァンタンの残酷さを知ってしまったジュリーは…。そしてサミールがヘイト・ク
ライムのリンチに遭い…。不安な時代の揺れ動く青春の痛々しいまでの残酷さを描きなが
ら、その繊細なみずみずしさと乱暴なまでの疾走感がまぶしく、心に突き刺さる。
 同時上映は、偏見のばかばかしさを軽快なラップの言葉とリズムで訴える『エイズ・ラッ
プ』。

(監督プロフィール)
ガエル・モレル
アンドレ・テシネの自伝的作品『野性の葦』で、寄宿学校の同級生に魅かれて自分がゲイで
あることに気づく主人公の戸惑いと人生への旅立ちを演じ、共演のエロディー・プシェー
ズ、ステファーヌ・リドー、フレデリック・ゴルニーらと共に絶賛される。本作ではその仲
間のプシェーズとリドーを起用、他の出演者もみんな同世代の友達だとか。

エイズ・ラップ (1994 France 5' 35mm color)

監督:ミシェル・マイヤー

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