プログラム98
ハイド・アンド・シ−ク+
ガ−ルズ・ショ−ト

ハイド・アンド・シーク


ハイド・アンド・シーク

(1996 USA 65' 16mm b&w)

監督:スー・フレドリック

もし隠れんぼ(ハイド・アンド・シーク)のゲームから思い浮かべるのが懐かしい子供時代
だとしたら、スー・フリドリックが見せるのは、思春期のセクシュアリティとは、通過する
ことがどれだけ静かな拷問で、一見やさしげな罪悪感であったかを思い出させてくれる。レ
ズビアンの少女時代の行動と、その欲望を詳細に語るインタビュー映像を彼女たちの学校時
代の写真と交互に、絶妙なタイミングで見せることによって、彼女達の思春期の始まりであ
った60年代とそれを取り囲んでいた社会的ホモフォビアにスポットを当ててゆく。“トムボ
ーイ”ルー役を演ずるシェルズ・ホランドは官能と繊細さのあいだで揺れ動く十代の少女を
演じて強い印象を残し、次第に自分の周囲の少女たちとのギャップに気付き、それをうまく
表現できないこと、欲望、嫉妬、怒りを映しだす。ルーの人物を通して、フレドリックは
我々の家庭における“愚劣な通過儀礼”と大人のセクシュアリティという未開の、未知の領
域を挑発的につなぎ合わせて行く。様々な話法のスタイルを鮮やかに結合させたこの作品
は、フレドリックの映画をこれまでも観続けてきたファンに、自分の同性愛のセクシュアリ
ティの個人史を再構築しようとした人に、そしてベッドの下に隠した『プレイボーイ』の魅
惑を知っている人なら誰でも、必見である。


ル−ルズ・オブ・ザ・ロ−ド

(1993 USA 31' 16mm color) 

監督:スー・フレドリック

『ハイド・アンド・シーク』のスー・フレドリック監督の前作。
 アメリカの家族生活のエンブレムともなっているステーション・ワゴン。ニューヨークの
街を走る一台のステーション・ワゴンを淡々と追うだけの映像を通じて、監督スー・フレド
リックは別れた恋人との生活の思い出をノスタルジックに語る。恋人の車をシェアし、別れ
た後も仕事の度に借りるなど、車はスーの生活に欠かせない存在となっていた。アメリカ人
は車好きだと言ってしまえばそれまでだが、それが、「単なる愛着の対象と同時に、失恋の
痛みのシンボル」にもなるとしたら? 『ルールズ・オブ・ザ・ロード』は、愛のメタファ
ーとしての車をとっても繊細に描いた作品。


(監督プロフィ−ル)

スー・フレドリック

フェミニズム映画製作の歴史、そして勃興するゲイ・レズビアン映画の流れの中で最も重要
な映画作家のひとり。新たな映像表現の開拓と、とりわけその固有の編集スタイルによって
国際的な評価を集め続けている。まだ彼女の映画を見たことがない人は、今すぐチケットを
予約すべし!


アダム (1996 USA 4' 16mm color) 
監督:アンドレア・ストゥ−プス
イントレピディシマ(1992 Spain 7' 16mm color)
監督:マルタ・バレッボ・コル
妊娠とレズビアン、どっちがいい?(1997 France 4' 35mm color)
監督:フランソワ−ズ・ドコ−・トムレット
モンスタ− (1993 USA 15' 16mm b&w)
監督:ジェニファ−・リ−ヴス
昆虫の出てくるエロチックな夢…? 『ハイド・アンド・シーク』2回目(5月17日)
は、本プログラムのテーマ“思春期の欲望”に沿った4本の短編を同時上映。『アダム』は
9歳の女の子が男のフリして近所の女の子とイケナイ遊びをしちゃうアニメ作品。マルタ・
バレッボ・コル監督(『コスタ・ブラバ』)の短編『イントレピディシマ』は、オーケスト
ラの指揮者を夢見る少女が、女の子らしい服を着せようとする母親に抵抗する短編。『妊娠
とレズビアン、どっちがいい?』は、物分かりの悪い親にカムアウトする娘のおとぎ話。そ
して、女の子の“歪んだ”欲望を、歪んだ映像とサウンドで語るジェニファー・リーヴスの
傑作『モンスター』。昆虫の夢って、本当にエロチックなんです。

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