プログラム98

イヴォンヌ・レイナーの殺人/サツジン

(1996 USA 113' 16mm color) 

監督:イヴォンヌ・レイナー

イヴォンヌ・レイナーの殺人/サツジン


ミルドレッドは50代の女性学の大学教授で、生粋のレズビアン。一方ドリスは還暦過ぎたア
ーティスト。乳ガンを患っている。ミルドレッドとは、初めての同性愛的恋愛。喧嘩したり
慰めあったりしながら家族との関係、仕事、乳ガンといった試練を乗り越えていく。『イヴ
ォンヌ・レイナーの殺人/サツジン』は、そんなふたりを優しさとユーモアをもって描いた
レズビアン・ラブ・ストーリー…なのだが、実はもうひとつ仕掛けがある。
 ふたりの脇には、ドリスの亡くなった母親と娘時代のミルドレッドという幽霊二人が出て
きて何やら楽しそうに勝手なチャチャを入れる。そしてもう一人、物語を中断するように、
これも幽霊みたいなレイナー自身が乳ガン手術で片方の削れた胸をさらけ出して登場。能天
気な幽霊とは対照的にまじめな顔して、乳ガンをめぐる社会の力関係について観客に提議す
る−−MURDER(殺人)が同性愛嫌悪や核実験、社会的抑圧、そして乳ガンから引き起こさ
れるものであり、その一方でレズビアンがサバイバルするためにはmurder(サツジン)を
(夢想)しなければならない、と。
 滑らかなカメラワークでふたりの愛を見守りつつ、“逸脱した”セクシュアリティや女性
の老いについて考え、病気についてのよくある見(誤まり)方や医学的定義に挑戦する壮大
な政治的瞑想、それがレイナーの“殺人/サツジン”なのだ。


(監督プロフィール)
イヴォンヌ・レイナー
モダンダンスの振付家から映画へ転向、1972年に長編映画を撮り始める。大胆かつ攻撃的な
フェミニズム論で常に論議を巻き起こしているが、その前衛的かつ洗練されたスタイルは、
高く評価されている。要注目!

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