ベント/堕ちた饗宴 BENT
(1997/イギリス/116分)

【監督】 ショーン・マサイアス 
【原作戯曲】 マーティン・シャーマン 
【脚本】 マーティン・シャーマン
【撮影】 ヨルゴス・アルヴァニティス
【音楽】 フィリップ・グラス
【製作】 マイケル・ソリンジャー 
     ディキシー・リンダー 

【出演】 ロテール・ブリュトー/クライヴ・オーウェン/ブライアン・ウェバー/ミック・ジャガー/イアン・マッケラン/ニコライ・ワルドー

ベント/堕ちた饗宴

 いろいろと「映画的」な味付け、というか、現代的な装飾を施そうとしたらしいのですが、それがすべて裏目に出てしまい、結果としては単に水増し、というか、無駄な贅肉だらけの締まりのない退屈な作品になってしまったようです。

 ここでは、「ゲイ差別」という事柄が抽象的な形で説明されるだけで、実質的な事柄として伝わってこないし、作劇のなかに消化されてないから、全然リアリティが生まれてこない。

 また、登場人物の心理描写が薄っぺらだから、極限状態にまで追い詰められ、そこから生じた感情の流れが全然伝わらない。だから、結果として、きらびやかな外見ばかりが目立ち、貧しい内容が露呈する、というバランスの悪いことになる。

 あと、「場」のとらえかたが、もの凄いつまらないと思う。
 例えば、冒頭の野外バー(?)のシーンなんて、お金をかけて撮っているんだろうけど、安っぽく見えるし、マックスのアパートなんてNYのロフトにみえてしまう。とてもじゃないけど、1930年代のベルリンには見えないんだよね。時代を超越したものを作りたかったのかもしれないけれど、それにしては中途半端な出来になっています。特にそのバーのシーンの演出のヒドさなんて、もう犯罪的だわ。

 また、この映画はいろいろな所でロケして撮影されたんだろうけど、全部バラバラにみえてしまい、作品として統一されていない、ツギハギだらけの代物のようです。

 撮影を担当しているのが、ギリシャ映画界の名手ヨルゴス・アルバニティスなのですが、とてもじゃないけどテオ・アンゲロプロスの映画の撮影監督とは思えないヒドい仕事ぶりです。

 アルバニティスとしては、あの大馬鹿映画「太陽と月に背いて」に続いてのゲイを題材とした作品なのですが、これはもう共に彼のキャリアに汚点を残しただけとしか思えない。あぁ、「霧の中の風景」が懐かしい!!アンゲロプロスの新作での名誉挽回を期待しませう。

 収容所という極限状態のなかで展開される、人間の尊厳の物語も、登場人物同様に観客に対しても、実に耐え難い苦痛を強いる映画になってしまったようです。

 ミック・ジャガーの女装はゴージャースでステキでしたが。

(北条貴志)

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