ベルベット・ゴールドマイン
VELVET GOLDMINE

(1998年/イギリス/124分)

【脚本・監督】 トッド・ヘインズ
【撮影】 マリス・アルペルチ
【衣装】 サンディ・パウエル
【音楽】 カーター・バーウェル
【製作】 クリスティーン・ヴェイコン
【出演】 ユアン・マグレガー/ジョナサン・リス=メイヤーズ/クリスチャン・ベイル/トニー・コレット/エディ・イザード/リンゼイ・ケンプ

 アメリカやイギリスでもの凄い評判がいいので、どんな映画なのかと期待して観に行ったらなんとも間の抜けた凡作でした。

 クリスチャン・ベール演じるジャーナリストを軸に、デヴィッド・ボウイをモデルとしたらしいグラムロック・ミュージシャンとイギー・ポップやルー・リードなどを想起させるアメリカのロックミュージシャンたちの姿を、当時の風俗を再現して描き出すのですが、これがまあつまらないことこの上ない。

 なにがつまらないかって、話として全然面白くもなんともない。ロックが好きな人間だったらすぐ思いつくような人物や事柄が描きだされるのですが、ただそうしたことをなぞっているだけで、映画的な拡がりに乏しいし、独創性というのが全然感じられないのですね。

 登場人物の内面や苦悩、恋愛感情、そして関係性なんかが描きだされてるとは思えないし、「市民ケーン」もどきの構成もあまり効果があるとは思えないし、映画の構成に奥行きをもたらしたというわけでもない。

 ミュージックビデオに毛がはえた程度の映像感覚は、その時代を切り抜く、というよりは無邪気に戯れた、というかんじ。「オースティン・パワーズ」の方がずっと凄かったと思う。

 あと撮り方ののあざとさも気になる。いかにも「ボウイ」、いかにも「ポップ」と思わせる撮り方は退屈なノスタルジーにすぎないしね。所詮はコピーはコピー。オリジナルに勝るわけがない。ボウイやポップの持つカリスマ性や怪しさなんて微塵も表現されてないし、こんな甘ったるいだけで生産性の欠けるノスタルジー映画を観るくらいだったら、ボウイやポップ、TレックスなんかのCDを聴いてる方がずっと有意義な時間を過ごせると思うよ。
 
 ただ、クリスチャン・ベールが少年時代、自分のセクシャリティに悩み、バイセクシャルであることをTVで公言したジョナサン・リース・マイヤーズを指して、両親に向かって「あれは僕だ!」というシーンなんて印象に残りましたが。 

 あれはゲイであれば誰でも通りすぎる過程ですよね。異性愛が当然とされるなか、どうして自分は同性に魅力を感じるのだろう、と悩む時期がうまく描かれていたと思う。僕も含めてあのシーンに共感するゲイの人は多いんじゃないかな?
 
 でもこんなけばけばしい装飾だらけの「フェイク(偽物)」よりは、ジャームッシュの「イヤー・オブ・ザ・ホース」なんかの方がはるかに「ロック」してたと思いますが。

(北条貴志)

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