熟れた果実 The Opposite of Sex
(1997年/US/100分)

【監督・脚本】 ドン・ルース
【製作】 マイケル・ベスマン/デヴィッド・カークパトリック
【撮影】 ヒューバート・タクザノウスキー
【音楽】 メイソン・ダーリング
【出演】 クリスティナ・リッチ/リサ・クドロー/マーティン・ドノヴァン/ライル・ラヴェット

 タイトルだけ聞くと、「ノンケ向けのポルノ映画か?」と勘違いしそうだけど、アメリカの方では「ニューヨーク・タイムス」や「タイム」のベスト10にランキングされるなど、異様に評価(過大評価?)が高い映画です。日本では残念ながらビデオ・リリースのみのようです。

 全体的には、ややブラックな笑いを含んだコメディというところ。まあソコソコ笑えはするんだけど、正直言って観た後、すぐに忘れてしまいそうです。話の展開に2重、3重の「引っ掛け(ドンデン返しという程のものでもない)」があって、これも最初のうちは面白いのだけど、さすがに何度も繰り返されると飽きてしまいます。

 話の展開に新味もなければ、登場人物の描写に深みもなく、ディティールに特別な面白さがあるわけでもない。

 話自体はかなりオーソドックスですが、ここにゲイの登場人物をかなり多く配した点が、まあ珍しいといえば珍しいかもしれません。しかし、登場人物の描写までもが「定番」というかんじで、さらに話の展開も言わずもがな、という方向に進んでいくので、正直言って手応えがないですね。

 なんか話の展開にもう少しヒネりが欲しかったと思います。脚本の段階で、小賢しい遊びに走りすぎたのではないでしょうか。

 またなぜにこの映画に登場するゲイの登場人物はあそこまでナイーブというか、頭が悪いのでしょうか?人を疑うことを知らない善良な人ばかり出てきます。これまた「ゲイの登場人物を肯定的に描かなくてはいけない」という馬鹿馬鹿しい「脅迫観念」にとらわれているからなのでしょうか。

 決して悪い映画ではないのですが、格別な面白さはありません。なんでこの程度の映画がベストテンとかにランキングされるのか、いま一つわかりません。「他にも選ぶべき映画があるだろうが!」と、思わず選者に詰めよりたくなります。

 「アダムズ・ファミリー」や「アイス・ストーム」での好演も記憶に新しいクリスティーナ・リッチはここでも子悪魔ぶりを発揮して、精彩を放っています。しかし特筆すべきは、リッチの兄を演じたマーティン・ドノヴァンと、ドノヴァンの昔の彼氏の姉を演じたリサ・クードローでしょう。

 リッチの「押し」の芝居を巧みに受けて、書き込みの浅い登場人物を豊かに表現しています。クードローはこの作品でNY映画批評家協会賞最優秀助演女優賞を受賞していますが、ドノヴァンも十分賞に値する存在だったと思います。

                           北条貴志

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