ラブ&デス
LOVE AND DEATH ON LONGISLAND

(1997/イギリス/93分)

【監督】 リチャード・クウィートニオースキー
【原作】 ギルバート・アドエアー 
【脚本】 リチャード・クウィートニオースキー
【撮影】 オリヴァー・カーティス 
【音楽】 リチャード・グラスビー=ルイス
【製作】 スティーヴ・クラーク=ホール 
     クリストファー・ジマー
【出演】 ジョン・ハート/ジェイソン・プリーストリー/フィオナ・ローウィ/シーラ・ハンコック/モーリー・チェイキン

ラブ&デス

 この映画は前半のロンドンでの描写が面白いのに、後半ロングアイランドに舞台を移すと一気につまらなくなってしまうのが難点かもしれませんね。

 ジョン・ハート演じるイギリス人の作家が、E.M.フォスター原作の映画を観るはずが、間違えてティーン映画を観てしまい、その映画に主演していたアイドル俳優に魅了され、彼が住んでいるロングアイランドまで追いかけに行く、といういわば「ヴェニスに死す」や「ロリータ」のバリエーションなのですが、別に文明批判やら哲学的な意味合いはありません。

 前半は非常に楽しめます。特に面白いのがジョン・ハート演じる作家の描写でしょう。ハートは現代文明に対し批判的な作家として描かれ、世俗のことに疎く、至るところでトンチンカンな行動をしてしまうのですが、これがなかなかいい。演じるハートも飄々として演じていて、映画そのものを豊かにしています。

 しかし、後半ハートがジェイソン・プリーストリー演じるアイドル俳優をロングアイランドまで追いかけて行き、映画の脚本の話をちらつかせながら、段々親しくなっていく過程はもまあ悪くはないのですが、前半にあった勢いがなくなってきます。なにか監督の方もどういう方向に持っていっていいのかわからなくなってしまったように思えたのは僕だけでしょうか。ラストもやや予定調和ですし、ホイットマンの詩なんかももう少し作劇としてうまく使えたらよかったのにね、と思いました。

 ただ後半の中で傑作なのは、現代文明を批判的に見ているハート演じる作家が、最後、ファックスという「最新技術」を使って、プリーストリーに愛を告白する、という場面ですね。(手書きで、というところがミソ)。

 しかもプリーストリーが熱心にそのクソ長いファックスを黙々と読んでいる、というのもまたミソ。それだけ読ませるものがあったということでしょうか。

 ハートだけでなく、ロングアイランドでのダイナーの主人やプリーストリーのガールフレンドといった脇役陣もなかなか好演です。最後、ハートがプリーストリーに「古代ギリシャを持ち出すまでもなく、昔からヨーロッパでは年配の男性が年下の青年を愛し云々」と口説くのですがうまくいかない、という点にヨーロッパとアメリカの感受性の違いを出したかったのかな?でもヘンリー・ジェイムズほど深みにあるものではありませんが。

 ところであのラストは何を意味するのでしょうか?

(北条貴志)

.....................................................................................................................................

<< HOME | TOP >>

(C) Tokyo International L&G Film&Video Festival