私の愛情の対象
THE OBJECT OF MY AFFECTION
(1998年/アメリカ/112分)

【監督】 ニコラス・ハイトナー
【原作】 スティーヴン・マコーレイ 
【脚本】 ウェンディ・ワッサースタイン
【撮影】 オリヴァー・ステイプルトン 
【音楽】 ジョージ・フェントン 
【製作】 ローレンス・マーク
【出演】 ジェニファー・アニストン/ポール・ラッド/アラン・アルダ/ナイジェル・ホーソーン/ジョン・パンコウ/ティム・デイリー/アリソン・ジャネイ

 最初はまあ悪くはないなぁ〜、というかんじだったのですが、次第にバカらしくなってしまいました。これって結局「ファンタジー」なんでしょうね。夢物語ですよ。でも「夢」もどこか現実味がないと、単なる「おとぎ話」で終ってしまうのと同様に、この映画もリアリティに欠けるから、ドラマとしていま一つ説得力がないんですね。

 結局ドラマとしての深みが全然ないんです。コメディなんだけど、いま一つ笑えない。この映画は主人公の女性の自己中心的な行動に振り回されてしまう話なのですが、彼女の幼稚な行動になんら批判的な見解が与えられていなくて、しかもそれをどこか容認している。これでは話にならない。

 友情と恋愛の狭間、という大人の題材を扱いながらも、映画としてはなんとも大人げない作品になっています。

 もう一つの問題はポール・ラッドのキャラクター描写でしょうか。繊細で「いい人」なんですが、本当は何考えてるかよくわかんないですよね。正に「私の愛情の対象」というかんじで、「対象」であって人間としての描写が希薄なので、話の展開に厚みのようなものを加えていないんです。

 しかもヘテロ女性にとって都合のいいキャラクターですね。若くハンサムでオシャレで安定した職業についてて、しかもゲイだから襲いかかったり、始終セックスを求めるわけでもない。

 こういう男の人はデートやセックスの相手、ルームメイトには丁度いいかもしれないけれど、生涯のパートナーとしてはどうかなぁ〜、と考えてしまいます。僕だったら選びません。でもポール・ラッドはカッコよくってステキですが。

 また中盤、アニストンとラッドがセックスをしようとするけど、うまくいかない、というシーンに至っては、「バッカじゃない?!」と大声を上げて言いたくなりますね。同性愛は「病気」のようなものだから、努力すれば治る、とでも言いたいのかね?

 結局これも「ベストフレンズ・ウェディング」や「恋愛小説家」同様にゲイはヘテロに無害な「アクセサリー」といった程度の扱いで、人間として全然描かれてないんですね。

 この程度の映画でゲイの登場人物が「肯定的に描かれた」などと喜んでいる連中は、その裏にある「差別意識」に気付いてない鈍感な人たちなんですな。

 ただしその他のキャラクター描写は悪くはないですね。ホーソーン演じる演劇評論家とか、彼と同居している俳優志望の男の子、そしてアニストンの家族の描写は面白いのですが、それらが映画全体の魅力にまでなっていない点がキツイところ。

 また役者もナイジェル・ホーソーンを除いては、全然魅力のない人たちが揃っていて、くだらないドタバタを延々繰り広げているから、なんとも締まりのない作品になっています。

 さらにこの映画はハワード・ホークスなんかのスクリューボール・コメディの影響が濃厚でしょう。ポール・ラッドはケイリー・グラントで、ジェニファー・アニストンはキャサリン・ヘップバーンというとこでしょうか。もちろんホークスの足元にも及びませんが(当り前?)。思えば女主人公とゲイの親友という類似した設定の「ベストフレンズ・ウェディング」もまた、スクリューボール・コメディを真似て、見事に失敗した悪例でもあったのですが。

(北条貴志)

.....................................................................................................................................

<< HOME | TOP >>

(C) Tokyo International L&G Film&Video Festival