queer de pon
  僕は恋に夢中僕は恋に夢中 
Addicted to Love(1999)

監督:吉行由実 
脚本:今泉浩一

7月20日14:00より当映画祭にて上映
僕は恋に夢中 解説ページ

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1999年に劇場公開されたゲイ・ポルノ映画。ピンク映画専門ミニコミ誌「PG」のベ ストテンで、その年の第4位という好評価を受けている作品だ。60分という上映時間 は一般的な劇場映画に比べると短いし、ただでさえ短い貴重な上映時間を、ラブシー ンに取られてしまうというポルノ映画ならではの制約もある。しかしこの映画は、思春期に自らのセクシュアリティに思い悩む高校生の気持ちを過不足なく描き出した作 品として見応えがあるし、登場人物の配置や関係性の描写などもバランスがよく、観 ていて楽しい気分にさせられる。  

大人顔負けの性知識を持ち、体もすっかり一人前なのに、実際の経験が乏しい高校 生ぐらいの年齢は、誰しも自分自身のセクシュアリティについて悩むものだと思う。 それは男も女も変わらないだろう。自分にはなぜ恋人ができないのだろうかと思ったり、自分は人と違って異常なんじゃないかと考えたりする。急激な身体の変化に驚いて、性体験もないのに性病にかかったのではないかと深刻に悩む人もいれば、自分に彼女(あるいは彼氏)ができないのは自分が同性愛だからではないかと考えたりもする。こうした悩みをまったく経験せずに大人になったという人がいたら、きっとその 人は“バカ”なのです。思春期に「自分は異常だ」と思わなかった人こそ、たぶん人 間として何らかの欠陥を持っているのです。  

この映画の主人公タダシは17歳の高校2年生。彼は友人コータを密かに慕っているのだが、そんな気持ちが相手に受け入れられないことは百も承知している。そもそも彼は「自分が同性愛者である」事実に自分自身で狼狽し、自己嫌悪に陥っているほどなのだ。しかし強い気持ちは抑えがたく、タダシのコータへの気持ちはそれとなく相手にも伝わる。だがコータは「俺はホモじゃないから」と言い放ってタダシを拒絶してしまうのだ。世界中から自分ひとりが孤立してしまったような孤独感と絶望感を味わうタダシは、たまたま電車の中で見かけたゲイのカップルを無意識のうちに追い始める……。  

映画はタダシが自分自身のセクシュアリティを受け入れ、思春期の悩みから解放されるまでを描いている。自分がゲイであることを周囲にカミングアウトし、恋人もで きて最後はハッピーエンド。しかしこの結末はまるきりの付け足しであって、映画は彼が「僕はホモだ」とコータに告白するところで実質的に終わっている。タダシにゲイの恋人ができるエピソードはほのめかす程度にしておいた方がよかったと思うが、 ここにラブシーンを入れてしまうのは“ポルノ映画”という枠組みの限界かもしれない。映画の中のさまざまなラブシーンに僕はほとんど違和感を持たなかったが、タダシと恋人が草原で戯れる最後のシークエンスだけは不要だと感じた。  

主人公タダシはずっと悩んで暗い顔をしているせいか魅力に欠ける。映画を魅力的にしているのは、ヒロキとシンジのカップルや、その友人ケーゴの存在が大きい。特 にケーゴが登場すると、画面がパッと明るくなる。

(服部弘一郎)
映画瓦版  http://kawara-ban.plaza.gaiax.com/


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もしも明日世界が終わるとしたら何を食べたい?
もしも明日世界が終わるとしたら誰と会いたい?
(『姉妹どんぶり/抜かずに中で』より)

なんとなく新宿TSUTAYAで借りてみた『姉妹どんぶり/抜かずに中で』で初めて吉行さんの世界に触れた時の高揚と幸福感、今でも忘れる事の出来ない大切な出来事。なんだか嬉しくなってしまって、朝までそわそわして眠れなかったんだもの。その吉行さんがいつの間にか薔薇族映画を撮っていて、気付いた時には上野での公開は先週で終了という有り様に自分が嫌に。慌てて全国の薔薇族映画専門劇場の上映スケジュールを調べた結果 、大阪での公開初日が京都への帰省の最終日に重なる事を知った時に は運命すら。 そして念願叶って梅田の劇場で観たらコレでしょ?もう嬉しくって嬉しくって。観ている最中、ずっと幸せな気分。

僕らの日常を辛辣に描きつつ(あまりにリアルなハッテン場面 もそう)、その優しい審美観はどこか桜沢エリカの漫画を彷佛(ちなみに筆者、大昔芝浦にあったGOLDってクラブでよくつるんでいた桜沢エリカの名作「わたしに優しい夜」にHIGASHIという名前で写 真が載ってるんだった)。機会があったので今泉浩一氏にその事を尋ねてみ たところ、「ばれた?」だって(笑)。この映画を観て少しでも感銘受けた人は漫画の方も是非是非。

友人である女優・津田牧子に誘われ、吉行さんが昨年撮った『せつなく求めて/人妻編』(昨年公開された日本映画で最も重要な作品の一つ!)の初号に足を運んだのは去年の春。そのまま花見、二次会と流れる中、すっかり抜ける機会を失った僕。ついには歌舞伎町の小さな台湾屋台料理屋で紹興酒に酔ってしまい、『僕恋』の素晴らしさについて語る語る。はっきり言って「で、あなた誰?」な仕事帰りのスーツ姿の僕が述べ続ける素人感想を嫌な顔一つせず聞いてくれた吉行さんとはそれ以来、すっかりメル友の仲。といっても、たまに思い出したように交わすその内容は、新作の感想だったり、季節の挨拶だったり、それに対するお返事だったり、たった数行だったりするんだけれど、それはたまに映画の中にも登場する吉行さんの部屋の様に簡潔で清潔で温かくて優しくて、リーマン生活にくたびれた僕の活力になっているのでした。

書き忘れていた大切な事を追加。吉行さんの映画の魅力の一つとして、作品に登場する食べ物の数々。
『発情娘/糸ひき生下着』ではケンタッキー・フライドチキン、脚本を書かれた『せつなく求めて/OL編』では朝のカレーライス。『姉妹どんぶり/抜かずに中で』で世界の終わりに選ぶ食べ物として選ばれたのはフレンチクルーラー。 そしてこの『僕恋』では千疋屋のフルーツサンド!

(eleking)
LUCKY SKY DIAMOND  http://www2.tky.3web.ne.jp/~eleking/index2.html


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(2001/7/13更新)
   
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