queer de pon
 
(2000/12/1更新)
 
マドンナ『MUSIC』
マドンナ最新ヒット曲「MUSIC」のビデオを分析!

「マドンナ『MUSIC』はビアンもの???」

マドンナの新曲「MUSIC」のプロモーションビデオは御覧になっただろうか? 私は 、友達に「今度はビアンものだよ」と聞いていたので、かなり期待していた。だが、 実際に見たら、「なんてことない」ビデオでガッカリした。なが〜いリムジン乗った マドンナが、シャンパン片手にたくさんの美女をはべらせ、クラブやストリップバー を豪遊する。ただそれだけなのである。いつものマドンナのビデオであれば、社会的 なメッセージがあったり、えぐかったり、優れた芸術家と組んで話題を呼んだりするのであるが、今回はただのHip Hopによくあるラッパーのハーレム願望を表現しただ けのビデオという感じだった。  

ゲイのマドンナ人気は絶大で、出す曲ごとにいくつものリミックスが作られ、ゲイクラブでヘビープレイされる。ビデオもプロデューサー選びからコンセプトまで、ゲイの心をがっちりつかんだニクイ作り。まるでこちらを意識しているとしか思えないマドンナの「ゲイよりゲイっぽい」姿勢は、ゲイの圧倒的な支持がある。しかし今回 のビデオ、これはいつものクリエイティブさが感じられないし、ましてやビアンものとは到底言えない。私はマドンナに裏切られたような気持ちだった。  

だが、ビデオの最後をみて納得。リムジンの「MUFF DADDY」というナンバープレー トが映し出されるのである。つまりわざとHip Hopを真似て作ったのだ。これは相変わらず同じたぐいのビデオを作りつづけるラッパーたちへの痛烈な批判なのである。(ラッパーと限定することは語弊があるかもしれないが)。そうやってみるとこれは良くできたビデオだ。  

私は今までそれらのビデオに不満を持っていた。どんなビデオを作ろうがその人の自由だが、毎回女の裸を並べて自分だけ喜ぶなんて創造性がないし、それでは「プロモーション」のためのビデオとは言えない。女は夏でも冬でも必ずビキニ。男は夏はTシャツ、冬は毛皮のコートに(なぜか)ニットのキャップ。今回マドンナはそれらを意識して、ビキニの女に囲まれ、ゴージャスな白のファーにカウボーイハットとい ういでたちである。そして指には、これもラッパーのマストアイテム、いくつものゴ ツイ金の指輪をつけて、安っぽい虚勢を張っている。この構図をあえて「マドンナ」 としてやることで、いかにその種のビデオがなんてことないものなのか、なのに相変わらず作り続けられているのか、を示したのだ。さすがマドンナ!!  

さて、気になるのがこれをみたPuff Daddyがどうでてくるか、である。あ、でも 、Puff Daddyの「FROZEN」なんて考えただけで怖いかも。それこそ身も心も凍るってやつだわ!

(ゆみこ)

「セルフパロディとしてのマドンナ『MUSIC』」

先日、発売されたマドンナのニューアルバム「MUSIC」(2000)は、ビルボードアルバムチャートでは、「LIKE A PRAYER」(1989)以来11年ぶりの1位。シングルチャートでも4週連続1位 を記録し、彼女にとって、12曲目の全米No1ヒットとなり、全世界で、記録的なセールスを記録しているようだ。マドンナの新曲というと、毎回、作られるミュージッククリップも話題を呼ぶわけだけど、今回もなかなか面 白い仕上がりになっている。馬鹿でかいリムジンに乗ったカウボーイスタイルのマドンナが、夜の街で暴れまわるという、ノリのいいビデオなんだけれど、実は、マドンナの今までのミュージックビデオをリメイク的内容なのだ。

話の展開として、運転手兼DJとマドンナ扮する女主人とのバトルが繰り広げられるのだけれど、この組み合わせは、A・ウォーホルのファクトリーを意識した「DEEPER AND DEEPER」(1993)ですでに登場済み。「MUSIC」ビデオのロング・ヴァージョンで、運転手が歌い出す「LIKE A VIRGIN」(1984)を、マドンナが「やめてちょうだい!」と やめさせるおかしいシーンがあるんだけれど、これが、「パロディなんだよ」と種明かしになってるわけ。

曲名からして「MUSIC」というぐらいだから、数々のクラブヒットを持っているマド ンナさんの集大性になってるのでは、ということで考えていくと、クラブ(ディスコ)が舞台という点では、最初期の「EVERYBODY」(1983)で、マドンナが踊りまくっていたシーンを思い出す。たいだい、このビデオは、MTVアワードで5部門を独占した大ヒットクラブチューン「RAY OF LIGHT」ビデオ(1998)を監督したJONAS AKERLUNDの 手によるものだ。マドンナの脇に座っている女性は、マドンナのライブのバックシンガーで、「VOGUE」(1990)や「IN BED WITH MADONNA」(1991)に出演しているNIKI HARIS。 また、車に乗ったマドンナという点では、「BURNING UP」(1983)を思い出す。このビデオは、舗道で身悶えしているマドンナに向かって男が車で向かってくるんだけど、 いつの間にか、車を運転しているのはマドンナになっているという内容。今回は、男勝りなマドンナが座席に陣取ってるんだから、「出世したよな」なんて思ってみたり 。マドンナの脇を固めるもう1人の女性は、おそらくDEBI MAZER。もともとはマドンナのメイクを担当していた人で、スパイク・リーの映画にも出演している女優さん。 彼女は、ショーン・ペンが、結婚当時、マドンナに贈ったクラシックカーが登場する 「TRUE BLUE」(1986)ビデオのコーラス・ガールの1人として、登場している。

「これじゃ、ほとんど、こじつけじゃないか」と思われるかもしれないけれど、マドンナがいきなりカンフーをやりはじめるアニメのシーンは、主演映画「WHO'S THAT GIRL」(1987)のオープニング・アニメを思い出さずにはいられないし、カウボーイ・ スタイルについては、何だか、ロンドンのゲイシーンで流行してるらしいけれど、男性社会の象徴としてのカウボーイの衣装(今回のアルバムジャケットを含めて)をマドンナが着てるという皮肉として受け取ることもできて、スーツを着て、権力者に扮した「EXPRESS YOURSELF」(1989)が思い浮かぶ。おかしいのは、ラストのリムジンの ナンバープレートに書かれた「MUFF DADDY」の文字。これは、明らかにパフ・ダディのギャングみたいな私生活を小馬鹿にしてるわけだけど、実は、マドンナさん、今年初頭、彼の恋人ジェニファー・ロペスに喧嘩を売ったことを思い出したりして。

このビデオを製作するにあたって、マドンナが、妊娠5ヵ月で、あまり身体を動かせなかったという事情があるわけなんだけど、そういう事情を逆手にとった形で、こんなに深読みできるビデオを作ってしまうマドンナには、やっぱり敬服してしまう。次のビデオにも期待が高まります。

(michi-ta)

MADONNA 「MUSIC」(2000)
DIRECTED BY JONAS AKERLUND
※DVDシングルは、ワーナー・ミュージック・ジャパンより発売中。

マドンナ「MUSIC」オフィシャルサイト http://www.madonnamusic.com/
マドンナ日本公式サイト(ワーナー・ミュージック・ジャパン) http://www.warnermusic.co.jp/artists/international/madonna/

(2000/12/1更新)

backtop