全世界のマドンナファンの中で、女優としての彼女に注目している人は果
たしているのだろうか。彼女がこの20年に出演した映画は17本。マドンナは女優になることに真剣だ。だが、スーパースターの歌手マドンナに比べて、女優マドンナはカルトスターだ。「エビータ」(1997)でゴールデングローブ賞主演女優賞に輝く一方で、ゴールデンラズベリー賞(その年の最悪の映画を決める)主演女優賞の最多受賞者(「上海サプライズ」(1986)「フーズ・ザット・ガール」(1987)「BODY」(1993)など)であり、
先日は同賞の20世紀最悪女優賞に輝いた。
何でこんな事態が起こるのだろう。歌手としての彼女は最強だ。すべてをコントロールするビジネスウーマンであり、一連のビデオクリップでは何度も世間を騒がせた。
それなのに、何で女優としては大成しないの? マドンナ曰く「結局は、自分で監督しないとダメなのよ」。う~む。でも、彼女が製作した「PAPA
DON'T PREACH 」(1987)や「BAD GIRL」(1993)でみせた見事な演技、「イン・ベッド・ウイズ・マド
ンナ」(1991)や「スネーク・アイズ/ボディ2」(1993)の素晴らしい出来を思うと「もしかしたら」という気も起こさせる。
マドンナの演じる役柄は大きく2つにわけられる。ひとつは50年前の脚本と言っても通
用するようなヒロイン。お色気の役どころに終始したり(「上海サプライズ」「影と霧」(1992))、悪女に扮して展開を牛耳ったかと思うとラストで命を落とす(「ディック・トレイシー」(1990)「BODY」「エビータ」)。実際は、向かうところ敵無しのマドンナが、ハリウッドの男社会に潰されているのだ。
もうひとつは彼女自身に近い役柄。「マドンナのスーザンを探して」(1985)は、当時のファッションをマドンナ自身が担っていることを象徴するものだったし、「イン・
ベッド・ウイズ・マドンナ」(1991)は巧みなイメージ戦略としてのプロパガンダフィルムに仕上がった。「スネーク・アイズ」(1993)では、偽ブロンドで映画女優になることを切望しているTV女優というセルフ・パロディを演じ、それまでの最高の演技を披露し、「エビータ」の野心的なシンデレラ・ストーリーは彼女の人生そのものだ
った。
そして、今度の「2番目に幸せなこと」(2000)。マドンナ演じるはヨガのインストラクター。彼女はゲイの親友と何と、子供を作ってしまう。んが、男ができると親友をポイッと捨ててしまう。これでは、まんま、彼女の人生ではないかと吹き出してしまった(ルルドのパパ、カルロス・レオンは何処)。つまり、この役柄をマドンナほど
、説得力を持って演じられる女優はいないということだ。上の分類だと後者に入る。
実生活でも親友のエヴェレットとマドンナ。子供ができて、鉄の女であることを放棄したマドンナと、ゲイにとって、永遠の夢である子供を持つというエヴェレットの気持ちが映画にうまく反映されていると思うし、セックスのない友情だけで成り立つ家族関係は非常にユニークなものだ。
身勝手な行動の上に、ラストで「私たち馬鹿だったわね」と台詞をはくヒロインに「
ふざけんな」と反感を覚える人もいるだろう。エヴェレットのとほほぶりも痛々しい
。でも、ヒロインにマドンナの人生を反映させていることを考慮すると、これは意図的な役作りだと思う。彼女は、決して、「お手本」になりたいわけではないのだ。
親権争いの裁判なんていうありきたりな展開など、突っ込みどころはあるけれど、まぁ、家族の意味やあり方を考え直す良い機会を与えてくれる映画なのではないかな。
(michi-ta)
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