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「「ヘドウィグ」と「ローズ」の20年」>シネマデータ
written by david
「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を観て、僕は、何より楽曲の素晴らしさに驚いた。ドラマチックな展開とそれに絡み合う歌詞。この映画は、サントラと抱き合わせ販売のMTV映画以前の、70年末に量産されたロック映画の匂いがするのだ。特に「origin of love」の哲学的な歌詞に完全にマイってしまった。

ヘドウィグのメイクを見て、カルト映画「ロッキー・ホラー・ショー」(1975)でティム・カリーが演じた真っ赤な唇のフランクを思い出したのは僕だけじゃないだろう。全然似てはいないけれど、どちらも惹き付けられずにいられないそのユニークなキャラクターで、観客の心をぐいぐい掴んでいく。「ロッキー」はまた、「ヘドウィグ」同様、歌とどぎついジョークが飛び交う舞台作品の映画化であり、観客が劇中のキャラクターの扮装をして、上映中に歌い踊ることが定着した特殊な映画なわけだけど、「ヘドウィグ」でも劇中で、おっかけファンがヘドウィグのカツラを真似てかぶるヘドヘッドが登場する。
しかし、共通点を見つけられるのはそこまでで、先にも述べた通り、どちらかというと、「ヘドウィグ」は、70年代のロック映画の空気を持った作品だと思う。「さらば青春の光」(1979)や「ピンクフロイド/ザ・ウォール」(1982)みたいな挫折とか絶望を描いた暗いやつ。中でも、類似点を見つけられるのが「ローズ」だ。

「ローズ」(1979)は、ベット・ミドラ−主演のヒット作で、ジャニス・ジョプリンをモデルにロックスターの悲劇を描いた映画だ。全米ツアー旅行で疲労困ぱい気味のローズは、アルコールとドラッグでぼろぼろになりながらも、エネルギッシュに歌い続けるが、最愛の男に捨てられた時、絶望の余り自殺をはかるという話。ヒロインのバイセクシャルとしての側面も描かれてはいるけれど、それが恋人と別れるきっかけになるにもかかわらず、ほんの少ししか触れられていない。

「ローズ」と「ヘドウィグ」は、ともにロック映画であり、主人公にセクシュアルマイノリティとしての側面があることも共通するけれど、そのキャラクターは大きく異なる。すでに大スターであり、全米ツアー真っ最中のローズに対して、へドウィグは、自分の持ち歌を盗んで大スターになった元恋人の全米ツアーを追いかけて、コンサート会場の側のダイナ−で、保守的な客にかこまれながら、派手な衣装で歌い続ける貧乏ロッカー。どちらも自分の人生を綴った心に響く歌を歌うが、アルコールとドラッグに頼らずして生きられなかったローズの弱さに対して、何度、苦境にたたされながらも、決してへこたれず、最後には、スターに成り上がるヘドウィグの力強さは、僕の胸を熱くする。
どちらも好きな映画である。セクシュアル・マイノリティの描き方については、制作された時代の差(22年!)もあるから、ここでは考えないことにしても、ロック映画でありながら、お約束のはずの主人公の死が最後まで訪れずに、逞しく生き抜く主人公で貫いた「ヘドウィグ」という映画を評価したい。
(2002/02/21up)
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