<第3回:上映作品を決めよう!>
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭は、その名の通り「映画」祭ですから、
何と言っても上映する映画を決めなくてはなりません。そこで今回は、映画祭の「心臓」部、映画祭のプログラムを決定するプログラミングセクションの一人、篠野陽(しのや あきら)さんにドクドクと映画祭の鼓動が聞こえるような話を聞きました。
そもそも、映画祭にかかわるようになったきっかけは、「8回目で上映され
た『美少年の恋』でした。偶然この映画のことを知っていたのだけど、見る手段がなく、そこで映画祭がこの作品を上映するかもしれないことを知って、
ボランティアに応募しました」とのこと。まさに「『美少年の恋』への恋」とで
も名付けたくなるような情熱! この情熱を胸に秘め、篠野さんは第9回からプログラミングを担当しています。
プログラミングの仕事は、主に4つの段階から成っています。
1. 上映作品探し:各スタッフが海外の映画祭のパンフレットやホームページなどで作品をチェック、あるいは直接海外の映画祭に行って、気になった作品を取り寄せます。
2. 見る、とにかく見る!:取り寄せた作品を片っ端から見ていきます。その中から上映作品を絞っていきます。
3. 配給先との交渉:この映画祭で上映する作品は日本での配給が決まっている作品が少ないので、自然と海外の配給先との交渉が多くなります。交渉はメールによるやりとりが中心となります。
4.プログラムを作る:上映作品を決定し、上映テーブル(プログラム)を組みます(今年は4月初旬に決定予定)。
「今年を例に出すと、最初の段階(以前の映画祭で上映しなかったモノ、今年請求を出したモノ)の作品の数は長・短編合わせて、300くらいです。その中から、例年ですと40前後の上映作品を選び出す感じです」。
なんと、300! 現在のプログラミングセクションは9人。均等に分担するとしても、300÷9で、えぇっと…(←暗算)、一人当たり約30本! やはり「『美少年の恋』への恋」級の映画への情熱と愛情がないと見られる数じゃないわ!
と、驚きつつ感心している私の頭にふと浮かんだ素朴な疑問――あのぉ、プログラミングの段階では外国語の作品は字幕なしで見るんでしょうか?
「映画界の公用語は英語と考えてよいので、英語圏以外の国から取り寄せた映画(あるいは英語以外の言語を使用している映画)は大抵英語の字幕がついています(原語が英語の場合は字幕はありません)ので、英語が出来れば、
何とかなります。とはいえ、外国語が出来なければプログラミングスタッフに決
してなれないと言うわけではありません。実際ボクも英語なんて中学生レベルくらいしかないと自認しています(笑)。それでも何とかやってます(笑)」。
なるほど、ちょっと安心…と、英検2級をヒーヒー言いながらしかもまぐれで取得
した(面接は笑顔で逃げ切った!)私は思ったのでした(笑)。
それぞれのスタッフが映画に対して篠野さんの「『美少年の恋』への恋」に勝るとも劣らぬ
情熱を胸に秘めているプログラミングセクション。作品の選考に際して
は当然熱い議論が飛び交います。それは、スタッフそれぞれの趣味の問題を超えて、全体的なプログラム構成の在り方についても及びます。
「理想を言えば、ゲイ・レズビアン・トランスセクシュアル作品がそれぞれ同じ比率で、かつせっかく日本で開催している映画祭なので、アジア作品、強いては日
本作品を欧米の作品よりも多く紹介できたらいいなと思っています。しかし、アジ
ア映画においての同性愛者の扱われ方は、欧米に比べてまだまだ遅れていて、
欧米と比べて新鮮味に欠けることは否めません。そのため、どうしても作品が偏りがちなのですが、それでもなるべくバランスに気を配って作品を組んでいるつも
りです」。
そして、気になる第10回L&G映画祭のプログラミングについて、「話せる範囲で」
現在の進行状況を。
「映画祭は今年で10回目です。同性愛者だけにスポットを当てたモノでなく、生きている時代、周りを取りまく環境、関係しあう人々まで、色んな視点を含んだ作品を紹介していきたいと思っています」。
膨らむ期待。第10回L&G映画祭のプログラム正式発表を首を長くして待ちましょう!
(井上 澄)
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