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M● 全編デジタル撮影・デジタル編集による作品であるとか、ストリーミング配信で公開するとか、CGのテクニカルな部分であるとか……。先日の完成披露試写
では特に『I.K.U.』のデジタルな側面に関心が集中していたようね。世の中、デジタル全盛の時代なのねぇ……。アタシのIT革命は、ようやくネットの通
販でエロビデオとかエロDVDを買えるようになった段階なのに(笑)。
でもね、世の中がどんなにデジタルになっていっても、アタシはセックスのアナロ
グな部分こそ大切にしたいと思うんだけど……。
S● 確かにインターネット上では、セックスが非常にサイバーなものとして描かれている。けれど、そうした現象はより肉体的な、身体的な、アナログなセックスの良さを再認識させてくれると思う。デジタルは、決して人間の身体性を否定しているのではなく、逆に光を当てる役割を果
たしているんではないかな。
M● 『I.K.U.』の舞台がそんなに遠くない未来ということもあるけど、妙なリアリ
ティがあるのは、サイバー・セックスとアナログ・セックスが上手くミックスされて描かれている点なんだろうね。
S● 90年代に入って「サイバー時代」と呼ばれるようになり、人間が機械として考えられるようになってきているでしょ。実際、身体をワイヤーでコンピュータと繋ぎ
、ワイヤーを通して別の人間と接触をするという試みもなされている。私達の肉体は機械でもあるから。『I.K.U.』はそうしたコンセプトの延長上に、もう一歩先に進めた世界を描いたものなの。登場するレプリカント達は人間のようだけれど、いわばデジタル・ハードディスク。彼らはコンピュータ端末である腕を使ってデータ採取をする。私にとっても自分の体は、レプリカント達と同じようにコンピュターね。今まで
いろいろな国を渡り歩いて経験してきたいろいろなセックスのメモリーを蓄積してるよ(笑)。
でも、『I.K.U.』でのセックスシーンは、ワイヤーごしの身体接触のないサイバー
・セックスではなく、すべてアナログな肉体を使ったセックスにした。それは、必ずしもテクノロジーを良いものとばかり考えているわけではないことを表現しているの
。サイバー・セックスがあるからといって、肉体を使ったセックスが無くなってしまうわけではない。テクノロジーが発達したからといって、自然が無くなってしまうというような極端な発想はないね。
M● 自分の出てるシーンなんで、こう言うのはちょっと気恥ずかしいんだけど、駐車場のシーンはホント、良いシーンだよね(笑)。ホッピー神山さんも、あのシーンにだけメロディラインのある曲をつけているし、他とはちょっと扱いの違うシーンよね。アタシ、「もっともロマンチックな恋人達」のシーンって呼んでるのよ(笑)。
S● あなたが演じたMamiが「桃山」を飲むシーンのことね。美しく描いていたでしょ(笑)。「桃山」というのは、オーガズムを再体験出来るドラッグ。いってみれば
人間のハードディスク・ドライブに蓄積されたセックスのメモリーを読み出してくれるソフトウェアね。セックスをすることが出来ない場合はそうした方法を使うことも良いのではないかと思う。それだけ私は性的なオーガズムというものを大切に考えていて、オーガズムをもう一度取り戻そうというメッセージを込めている。
M● シューリーのいう「オーガズム」は、ジェンダーやセクシュアリティの枷を飛び越えたところにあるものなんでしょ?
S● あのシーンは、いわゆる女装者のイメージとは対立する。まず、ドラァグクィ
ーン同士のカップルだという点。そして、あなたもそうだろうけど、ドラァグクィー
ンは人を楽しませるエンタテナー。でも、あのシーンのドラァグクィーン2人は、ただ純粋に自らの快楽の喜びにひたっているという点。ステレオタイプな捉え方ではないね。
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