<第2回>「ベニスに死す」
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by david
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う~ん、ヴィスコンティ初体験。クィア映画の金字塔について、文句を言うつもりはないけれど、僕にとって、この映画は可でも不可でもなく、「ふ~ん」というのが正直な感想。妖しい魅力が持ち味のおじさまダーク・ボガード主演ものでも、ブラックなノリの「召使」の方が僕好みだし。
「ベニスに死す」は、心身共に疲れ果てた老音楽家が静養のため訪れたベニスで、美少年に出会い一目惚れ。これがきっかけで、生きる情熱を取り戻すんだが、忍び寄る死の波には勝てず…というお話。まぁ、言ってみれば、この映画は、地位のあるいい歳したおっさんが、小悪魔的な魅力を持つ少女にメロメロゾッコン(死語)。奇行に走り、破滅する「ロリータ」ものに属すると思う。
ボガード扮する老音楽家が、美少年に出会うシーンは傑作だ。おっさんは、自分のテーブルの上にある邪魔な花瓶を脇に押しやってまで、少年から目を離さないほど夢中になる。「おぉ~、こりゃええわ」と鼻の下伸ばしてたら、少年が、ふいに自分の方をふっと振り返る。このゾクゾク感。ああ、素敵な片思い。でも、共感できるのは、ここまで。
恋は盲目とは言うものの、おっさんの奇行はエスカレート。帰路に就こうとしたら、手違いで駅に荷物が届かず、ホテルにとんぼ返りするシーン。船上で、「また、あの少年に会えるぞ。ひゃっほ~!待ってろよい」と大喜びするおっさん(→魂の高揚とでも呼ぶのか)は笑ってみてられるけど、これが、奇怪な若返り白塗りメイクにまで達すると、さすがについていけなくなる。これが芸術家の狂気なの? ちょっと違う気がするんですけど。
でも、それはそれでよしとしよう。僕が、いまいち楽しめなかったのは、この映画が 描くとってつけたような「芸術家の苦悩」と、「恋の滑稽さ」と「忍び寄る死」のバランスの悪さゆえだ。まぁ、人生って、そんなもんだけど。
ところで、美少年を演じたビョルン・アンドレセン君って、ほんとに美少年なのかね? あんまりピンとこない。どれだけの美少年かとテレビにかじり付いて観察したものの、う~む。。。。これって、好みの問題!? 僕は、むしろ、服装に助けられてる面が大きいかと思う。彼の顔をみていて、「エンジェル・アット・マイ・テーブル」や「インティマシー」に出てるケリ-・フォックスという女優さんを思い出したけど、これはまた別の話。
僕がこの映画を観るのは、年齢的にちょっと早すぎたのかも。
(2002/01/21up)
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<第3回リレーエッセイ予告>
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