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「過激な友人」 >シネマデータ
written by 溝口哲也
試写会の当日、渋谷で僕はヘンテコな頭をしたスタッフの人たちに迎えられた。みんながみんな、デカくて黄色い、一枚のボードのような物をつけている。これは、この映画の主人公の髪形を真似して作られたウィッグのようだ。特大の黄色いボードに、フリーハンドの黒い線。髪形に切ったボードに、ただ切込みを入れてかぶるその姿は、なんだか巨大なシャンプーハットを思い出させた。

「それはいくらなんでもヘンすぎだろ!」

極端に大きいそのウィッグは、もはや髪とは思えないアバンギャルドなデザインで、あたりに強烈な印象を与えている。しかもそれを、男女関係なく数十人がかぶっているのだ。僕はあまりの奇抜な光景にビビりながら、会場の奥へと進んでいった。

席について、映画を観る。 うーん・・・、強烈だ・・・。

会場入り口での雰囲気も強烈だったけれど、映画のストーリーも相当なものである。主人公は、ベルリンの壁の残る東ドイツに住む青年。彼は自由の国アメリカで恋人と暮らすために、性転換手術を受けるのだ。性同一障害が云々とか、そんな話ではない。彼が「彼女」になり、母親のパスポートで母国を脱出するのは自由のためなのだ。なんとロックンロールな!

あらすじは置いといて大まかな流れをいうと、手術に失敗してブツが残ってしまい、アメリカですぐオトコに捨てられ、ベルリンの壁が破れて手術の意味も無くなり、つぎに出来た年下のオトコにも捨てられ、なんとそいつが自分の曲を盗んでスターになり、復讐のために彼のライブを追いつづけるということ。つらい。

僕はこの映画を観てはっきり思いましたよ。「そんな人生、死んでもヤダ!」

まあ無理して自分と照らし合わせること無いんだけどさ。そんな、やってられない人生でヘドウィグはどう過ごしているかというと、全ての感情、悲しみや怒りを歌に託しているんだな。なんつっても「ヘドウィグアンドアングリーインチ」って言うくらいだし。だって「怒りの1インチ」だよ(ちなみにこの1インチは、手術後股間に残ったブツを指します)。

イキザマも強烈、外見も強烈。でも、彼女の歌う歌はリアルに満ちている。人生の不条理への怒り、恋人に捨てられた怒り。そしてそれでも、かけがえの無い誰かを求めてしまう気持ち。彼女はみんなが持ちうる原始的な感情を、全ての歌に込めているのだ。その内容はとても共感できるし、自分とは遠い存在であるヘドウィグが歌うからこそ、なおさらその歌詞に普遍性を感じられるのだろう。
みんな、自分の片割れを求めて旅をしている。物語のラストには、その歌い手であるヘドウィグを、観客はきっと友人のように身近に感じられるはずだ。
(2002/02/21up)
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