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「『HUSH!』にみる「癒し」系」 」
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w ritten by Dulcinea

「強い男」と「癒しの女」がモテルそうだ。井川遥現象が巻き起こり、TVではケイン・コスギが自慢の肉体美を惜しげもなく披露している今日この頃。雑誌では『「強い男」&「癒しの女」がなぜもてるか?』なんて特集が組まれたりして、それに惹かれて思わず私も雑誌を手に取り、熟読してしまったのだが・・・。そ、その内容とは!

某有名大学医学部教授が動物行動学的に語るところによると、この現象というのは人間の中にある動物本能の影響で、ヒトのメスは生殖的にも社会的にも強いオスを繁殖相手として選び、ヒトのオスは自分の子供を産みしっかりと育てていけるメスを選択する、ということらしい。

「はぁ?」
私の反応はお構いなしに教授の説明はまだまだ続く。

脳が大きく免疫力のある男性と母性本能にあふれた女性が目指すところは? 子孫をのこすことなんですね〜(教授、ここで何故か笑顔)。父と母がいて子供が生まれる。「もてる」「もてない」と議論していても、結局戻るところは「家族」なのである、と。

「HUSH!」は、田辺誠一&高橋和也演じるゲイカップルに片岡礼子が「子供が欲しいの!」と頼み込むところから始まるのだけど、そこには「強い男」も「癒しの女」も登場しない。私たちの理想というか妄想を無理やり詰め込んだドラマの中に出てくるような三高男(言い方古い?)の影も形もないし、「私フラれてばかりで〜」と言いつつ演じるのは中山美穂、なんて少々ツッコミを入れたくなるようなことも全くない。ある意味、見ていてドキリとするようなリアリティーを持った人物ばかりが現れ、思わず自分と重ね合わせてしまうこともしょっちゅう。実際、 冨士眞奈美演じる母親役以外は全て橋口監督の分身なんだそうだ(ちなみにこの 冨士眞奈美演じる母親は監督の母親そのものらしい・・・かなり笑えるので注目!)。

しかしあえて「癒し」という言葉を使うとするなら、これはまさに高橋和也君に当てはまる。男闘呼組のメンバーとしてバンダナ巻いてジャニーズしていた過去、そして豊川悦司の金田一シリーズ「八つ墓村」で棒読みしていた頃を忘れさせてしまうような「癒し」の演技だった。トリマー(犬の美容師)役の彼が犬とたわむれている様子は、子供と遊ぶ親の姿にも見えた。片岡礼子との子作りに「かたくな」に反対する彼の部屋には自分と犬との写真が飾ってある。孤独のあらわれとも取れるかもしれないが、私はそこから強烈な母性のアピールを感じた。それはこれから3人が家族を作り上げていく予感なのだろう。

そして高橋和也の相手役・田辺誠一はどうかというと、「あいまい」である。同僚の女性に迫られても、恋人に怒られても嫌な顔はできない。言ってみれば慎重で優柔不断な性格なのだが、それは見ている私たちをイライラさせるものではなく、むしろ何かほっとさせるものを持っている。「強い男」ではないが、決してイコール弱い男ではない。そんな彼の流動性を橋口監督はうまく「水」にたとえて表現している。雨・プール・井戸・川・・・彼の周りには水があり、そのさらさらと流れる水の音に癒されるように、彼の存在にもまた癒される。

「新しい家族のカタチ」をテーマに、強烈なキャラクターを持った様々な人物が現れるこの作品は、その個性がけんかすることなく見事に調和し一つの映画となっている。上映時間は2時間以上あるのだが、私は一度も時計に目をやることなく見ることができた。そして観終わった後、ほんわかとした幸せな気分になった。
癒されたい人、ぜひ映画館に足を運んでください。

(2002/04/22up)
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