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「自立と子ども」 >シネマデータ
written by 溝口哲也
 皆さん、よく寝れてますか? 俺ね、寝る時はいつも、まだ冷たい布団の中でいろい ろ考え事しちゃうんだよね。「今日は失敗しちゃったなー」とか、「明日アレやんなきゃ…」とか、そんなかんじ。みんなそうなんかな? なんとなく毎日をこなしてるというか。正直、人生に目的がある人は立派ですよ。それは「ハッシュ!」にでてくる人たちもおんなじ。何かが欲しいはずなのに、その何かをあきらめて毎日を生きている。人生をあきらめていた、そんな主人公が、自分の人生を取り戻すために立ち上がり、奮闘するというのがこの映画のストーリーなのです。

自分の人生を取り戻す手段とは何か? それは「子どもを産むこと」。独身のヘテロでも、子どもは欲しいだろう。ゲイやレズビアンでも子どもが持てるなら、ほんとにステキだよね。でもみなさん。ちょっといい? 間違えないで。この映画での一番の目的は、「自分の人生を再生させること」なんですよ。「子どもを産むこと」は、それに付随する手段なの。
主人公の一人、朝子は物語後半で、出産に反対する人たちに激しく語ります。『いろんなことあきらめてたんだけど、誰かとご飯食べたり、笑ったり、手をつないだり、なんかきれいだなとか、いいなとかそういうこと、どんどん思えてきて』・・・。ふんふん、たしかに。人のつながりってのは、なんかいいよね。そして話は進み、大まかに言うと最終的な主張は、『子どもがいれば、ワタシ変われる気がする』ってことみたい。そうか、変わりたいのか。それも共感できる。俺だって、どこかで変われればナァ・・・。

オイ! ちょっと待て!!
自分の人生を充実したものに変えたいのは良ーくわかる。でも、それに子どもって絶対必要なのか? 生むのはいいけど、その後その子の一生と、ずっと関わっていくんだぞ?
「子どもを産むことにチャレンジ!」 
こういったテーマって、人道的というか、絶対的善というか、盲目的に「いいことだよね」って思ってしまいがち。でもね、俺はこの映画を観て、未熟な母親が起こす幼児虐待のニュースを、いやというほど思い出してしまったよ。生めばいいってもんじゃない。
大体なあ。初対面の男に向かって『家族になる気は無いけど、あなたの精子が欲しい』だとッ! 本当に子どもが欲しいなら、テメエで死ぬほど稼いで精子買ってみろ! 「人とつながる」のと「人に甘える」のは別モンだッ、馬鹿野郎!

自分の人生変えたければ、変えればいい。でも厳しい事を言うと、自分の人生ってのは、たった独りでのみ立ち向かうべきもんなんだよ。子どもがいないと自分の人き方も変えられないなんて奴は、子供を育てる資格すらない。

俺は決してシングルマザーや、ゲイの子育てを否定してるわけじゃないんです。充分、子どもを育てられる状況なら、みんな頑張って生めばいいと思うし、本当は彼女(彼)
たちが安心して子どもを育てられる社会的基盤だって欲しい。

たとえて言うと、「自分の人生再スタート」ってのは、独りで立ち向かうべきファーストステージじゃないだろうか。そしてそれに成功し、自分の人生を舵取りできる人だけが、「出産」というセカンドステージに行くべきだろう。これらふたつを同時にやろうってのは、同意できない。
朝子には子どもに頼らず、勝裕と直也にも頼らず、自分自身の力で人生を変えていって欲しい。もし朝子が独りで自分の人生を見つけることができ、それでも勝裕と直也に子どもが欲しいと告げたなら。
その時にこそ、俺は心の底から「頑張れ」と彼女に言いたいと思う。
(2002/04/22up)
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written by 川波 歩
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