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「B級加減がゲイ加減」 >シネマデータ
written by taka
この映画、のっけからB級です。今回紹介する「GO!GO!チアーズ」ですが、一体、レンタルビデオショップのどこに置いてあると思います? アダルトコーナー? ゲイ・レズビアンコーナー? ノンノン、それならまだいいですよ。実は、同時期にレンタルが始まった話題作「チアーズ!」の隣なんです。なんでぃ、まがいもん扱いじゃねーか。見つけた瞬間、萎えました。あー、きっと店員は「…この人、間違えてるわ、クスクスッ」なんて思ってやがるんだろーなー、なんて考えるとどうも気恥ずかしくて、猫背になってコソコソとレンタルしてきました。トホホ。

そもそも、「レズ疑惑のある17歳のチアリーダーの女の子が、レズビアンを治すために同性愛更正施設に入れられる」っていう筋書き、どう思います? 僕はこのストーリーを聞いただけで、かなり胸くそ悪くてイラッイラしました。「おいおい、このご時世に、そんなフォビックなストーリーを、よくもまあ作れたもんだなぁ。監督をさらし台の上で辱めるぞコラ! しかもレンタルの時には、人に恥をかかせるし(被害妄想)ふざけんなっ!」などと、観る前から、レビューが書けちゃいそうなくらい理不尽な思いを抱えつつ、再生ボタンを押したのでした。
そしたら奥さん! どうでしょう。再生したとたん画面に広がる、バストボンッ! ヒップドンッ! でビーチクもくっきり見えてしまう視聴者大サービスなオープニングに、理不尽な思いは思いっきり肩すかしされ、憤りも使い終わったコンドームのごとく、しにゃっしにゃにしぼんでしまいました。ストーリーも演出も終始B級で、理不尽もどこ吹く風な脱力感。まーそれなら力を抜いて見てみることにしましょ。

ストーリーは先ほど述べたように、レズ疑惑のある17歳のチアリーダーの女の子が、レズビアンを治すために同性愛更正施設に入れられるっていうどーしようもないモノなのですが、登場人物もどうしようもないんです。
同性愛更正施設から迎えに来たのは「元ゲイ?」のマッチョな黒人さん(いかにもアヤシイっすよね。期待を裏切りません)、施設長はピンクのスーツを身にまとったヒステリックなオバサン(眉毛はドラァグ並の弧を描いてます)、その施設長の息子はこれまたアヤシさ爆発のハンサムマッチョ(これも期待を裏切りません! フフッ)、主人公を迎え入れる先輩ゲイ・レズビアン達も、モヒカンレズ、マゾレズ、文学レズ、ジャイコレズ、おすぎによく似たホモ、ジャニ系ホモ、アジアンボクサーホモと、お腹一杯のフルラインナップ。おまけに更正施設はピンクを基調としたメルヘンチックな建物なの。

そんなメンバーの中で、ゲイ男子たちは黒人マッチョインストラクターに色めき立ちながらキャンキャン球技を練習したり、ビアン女子たちは女子同士でちちくりあいながら育児や家事の実習をしたりと、かえって同性愛を助長しちゃうんじゃん…? っていう更正プログラムをこなしていきます。
初めは自分自身に対しても、まわりに対してもかたくなだった主人公も、いつしか打ち解けていって、そのうち仲間の一人とアレアレレ…。おっと、この先は映画をみてくださいね! フフフ。

だ・け・ど! これだけB級のどうしようもない映画なのですが、全然くだらなくないんです。施設の更正プログラムや施設長の言動は、ストレート至上主義とか性的役割分業とかに囚われまくっていて、ゲイリベラリストなんかが見たら泡ふいて失神しちゃうんじゃないの? ってくらい極端。しかし、それは差別や偏見からくるノンケ的価値観の象徴というのではなく、そういった差別や偏見に囚われた「常識者」を皮肉ったものなのです。だから、いやいやプログラムを押しつけられるゲイやレズビアンのまともさが自然と浮き立ってきて、「ありのままである」ことが、いかにあたりまえで大切なことかが、押しつけがましくなく伝わってくるんです。娯楽作として忘れてはならない、エロあり笑いあり恋愛ストーリーありのコミカルなB級具合だからこそ「ありのままの自分ってステキ!」っていうメッセージを、ナチュラル〜に伝えられるんですね。
きっと「差別反対!」って声上げるよりも、「僕は辛いんです」と涙を誘うよりも、B級路線でコミカルにいったほうが、ポップで明るいゲイ・レズビアンカルチャーにはしっくりくるんだな〜なんて思いながら、エンディングではハンカチで目頭を押さえるのでした。
(2002/04/10up)
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