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劇団フライングステージ 
関根信一さん ロングインタビュー(2)
≪コミュニティのなかの劇団、商業演劇のなかの劇団≫
−コミュニティのなかの劇団としてのスタンスと、商業演劇のなかの劇団としてのスタンス、その辺の兼ね合いというのはどのようにお考えですか。
 今回の『Trick』っていうのは初のプロデュース公演で、いつもの公演とはちょっとだけ観客層が違ったのね。いつものお客さんよりも「芝居好きな人」が余計観に来たっていうか。いろんな方から感想をいただいたんだけど、お客さんのアンケートのなかで「ゲイであるという、あるフィルターを通して観ると、面白いのかもしれないが、そうじゃないところで観ると非常にコミュニティに依存した、甘えている部分がある」っていうのがあったのね。その方は、初めて観にきてくれた人なんだけど。僕は悔しくてね。で、そういうこと言われないためには「倍」がんばらないといけないんだって思いました。
旗揚げしたばかりのとき、当時の芝居仲間から「なんで、ゲイとかわざわざ言うわけ?」とか「なんでゲイの芝居しか書かないの?」とか言われたんだけど、「だってそういうところないから一つぐらいあったっていいじゃない」って言って僕は十年やってきて、そういう質問に対する答えっていうのは、もう出しつくしたと思ってたんだけども、また違うところから言われるんだなあって。でも、負けてませんから。

−劇団フライングステージのホームページの今年初めの日記で「今年フライングステージとしては10年やってきて、プロデュース公演、外部の方の戯曲で、劇団として売っていくっていうことをやる」っていうふうに書かれていたんですけど、外に売っていくというのは。
 「外に売っていく」っていうのは、今言ったみたいなそういう批判を恐れずに、どれだけのことができるのかってことかな。僕は「打って出る」っていうのが好きなのね。劇団として外に対して、ノンケの世界に対して売っていくっていうことを試してみたかったっていうのは、とってもありましたね。それなりのものをやってるっていう自信はあるんだけど、一般的にはどう評価されるのかっていうのを、劇団旗揚げ10年っていう節目で、ちょっと感じてみたかったのね。

−(劇団が)外に出ていくというときに、今いる1000人の固定のお客さん以外のところにもアピールしたいっていう部分はありますか。

 それはもちろん。ただ、誰が観ても面白いっていうふうにするために、角を取ってしまったり、説明をていねいにするとかっていうことを前は考えてたんだけど、最近はやめました。「わかんなくてもいい、おもしろければ」とか「わかんないっていうことを反省しなさい(笑)」って思うようになりました。

−今のお客さんとフライングステージのつながりってすごく密接で、「外に向けて」っていうときにセクシュアルマイノリティではない観客が増えるっていう話にもなってくるわけですが、そのときに今のフライングステージの熱心なお客さんのなかに、観客にノンケが増えるということに対して多少違和感を持つ人もいるかと思うんですけど。
 今のところウチの劇団の客席では、セクシュアルマイノリティの方がマジョリティで、そうじゃない人の方が居心地悪さを感じてるんだと思うのね。とにかく男性観客が多いんですよ。今、演劇っていうのは女性に支えられているので、こんなに男の人(の観客)が多い劇団はまずないってことで、劇場のスタッフさんには、驚かれるのね。お芝居見物って娯楽じゃないですか。
例えば、週末に友達とかと「じゃあフライングステージの芝居観にいこう」って言って、ゴハン食べて、芝居観て、ちょっとホロっとしたりして、でも最後は笑って「面白かったね」って言いながら帰ってくるのって、素敵な週末の過ごし方だと思うのね。そんな「時間」と「場所」を提供できてるっていうのが、僕は面白いなぁと思って。そんなところにノンケのお客さんたちが居合わせたときに、違和感を感じたりっていうのもね、仕掛けとして面白いと思うの。
一般のコンサートの客席で、ゲイのカップルが寄り添って観るってなかなかできないじゃないですか。でも、ウチではそれができるんですよ。それって、僕はとても大事なことのような気がするのね。それで全然かまわないんだと思うの。だから、そんな客席に、ノンケのお客さんが驚いてくれたって全然かまわない。かえって、そういう場としてあり続けることが、僕は大事な気がしてる。僕らが作ってる芝居だけじゃなくって、客席のありようまでもふくめたトータルな経験になってるっていう方が僕は面白いんです。「それでもいい」って思ってくれる人が観に来てくれればいいし、また、僕たちも、その人たちの期待に応えられるものを作り続けていきたいと思いますね。

−『ひまわり』のパンフレットのなかで、関根さんは「フライングステージが自分にとって『ふるさと』、『ホーム』って言えたらいいと思う」って書いていて、今、関根さんにとっておそらくフライングステージが(自分にとっての)「ふるさと」という自信があって、それで「外へ」っていう流れなのかなという気はするのですが。
 一昨年から去年にかけて、僕は何本か続けて、外の芝居に客演したんですよね。そのときに思ったのは、「僕が帰ってくるところはここなんだ」ってことでした。フライングステージのお客さんと僕らの関係はとても面白いのね。普通の劇団っていうよりも、旅芸人、旅の一座みたいな感覚なの。行く先々の町に贔屓のお客さんたちが待っててくれて、「きゃぁ〜、今年も来てくれた〜」って言ってくれるような。僕自身、「劇団の代表」っていうよりは、「旅の一座の女座長(笑)」っていう感覚なのね。僕今年37歳になったんですけど、この年で、こんなやりがいを感じながら、わくわくしながら演劇に携われている人間はそうはいないだろうって思いますね。同年代の他の役者仲間を見ても。だから、「僕はなんて幸せなんだろう」って思ってますね。

(2002/07/15up)
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