queer de pon
 


映画祭の作り方
(4月)

<第5回:お金を集めよう!>  

「あなたを愛してる/だってあなたは家賃を払ってくれるもの (Ilove you/You pay my rent)」("Rent")と歌ったのはペットショップ・ボーイズ。そうよねぇ…なんだかんだ言ったって結局はお金よね〜、とは申しませんが、でもマルクス&エンゲル スもびっくりのこの高度資本主義社会では、何かをしようとすればどうしたって「お金」と付き合わざるを得ないという現実があるわけで…(ちなみに、マルクスによれば「愛は愛と交換されねばならない」とのこと。いや〜ん、マルクスってなんてロマンチスト! )。  
そんな「現代の高度資本主義社会に生きる=ホモ・エコノミカ ス(経済人)として生きる」という避けられない業を背負って、 我らが東京国際レズビアン&ゲイ映画祭も当然ながら運営のためのお金を必要とします。では、そのお金は一体どこから? というわけで、今回は「協賛セクション」の野宮亜紀さんと酒井一平さんの登場です。   

昨年の第9回L&G映画祭で上映された「ブランドン・ティーナ・ストーリー」の字幕翻訳に携わったことから映画祭にかかわるよ うになった野宮さん。
「昨年は東京L&Gパレードの実行委員をやっていたので、今年はまた新しいことをやりたいと思って。映画祭は、なんとなくオシャレなイメージはありましたね。それで騙されて…というわけじゃないんですけど、映画そのものは大好きなので、だいぶ前から興味はありました」。
オシャレなイメージ…あぁ、そう言えば私も抱いていました。やはり、会場のスパイラル@青山の影響大でしょうか(笑)。 そのオッシャレ〜なスパイラルを会場として借りるためにも必要となるのが、協賛企業や団体、すなわちスポンサー様の出資!  協賛セクションのお仕事は、まさにその協賛企業・団体との交渉です。
「最初はコンタクトする企業や団体と、予算の目処を立てます。 基本的には、昨年協賛を頂いた企業に再度コンタクトすることになりますが、新規であたるところもあります。あとは分担を決めて企業を回り、主旨と提案のご説明をします。協賛が決まった後は、映画祭を運営していく中で、先方の企業と話し合った条件にそぐわないようなことが起きないようにチェックすることも必要 になります。協賛を頂いた企業とは年間を通したお付き合いになるので、橋渡し役として、お互いによい関係を保てるように努力していくという形です」。
ははぁ…と思わず襟を正して正座したくなるような野宮さんの折り目正しい語り口に、まさに「お金が動く」=ビジネスとしての 映画祭の側面をひしひしと感じます。従って、協賛セクションのお仕事には、さまざまな意味での配慮が必要なようです。
「先方に話をする上では、映画祭の全体を把握していないといけないし、映画祭そのものの主旨とか、意義についても説明できないといけないし…」
「特に、お金がからんでくるので下手をすると信用問題にもなり ますし。あと、先方はビジネスでこちらはボランティアなので、 ペースの違いもあって、きちんと対応するためには、頻繁に連絡を取り合って物事を決めていかないといけないということもあります」
先方はビジネスでこちらはボランティア。この『映画祭の作り方』 のリード文にもあるように、L&G映画祭のスタッフは全員がボランティア。けれど、そのことを「ビジネス=プロ、ボランティア= アマチュア」という単純な図式に還元してしまってはいけないということ。協賛企業や団体から、そして観客の皆さまからお金をいただく以上、ボランティアであってもビジネスのペースとシビアさにきちんと対応しなくてはならないということ。 そんな、厳しさと背中合わせの協賛セクションのお仕事ですが、 もちろん厳しさだけではなく、やりがいや楽しさもあります。
「オシャレな外資企業を回ることも多いし、キャリア・ウーマンの気分を味わうには一番かも…というのは冗談として、一般 の企 業や団体と接触できるのは、大変だけれど、いろいろ気づかされるところも多いし、楽しいと思います。映画祭そのものの主旨とか意義を問われることもあって、『なるほど』と気づかされることもあるし。先方にとっては、自分が映画祭の『顔』になるわけですから、責任重大ではありますけど、その分やりがいも大きい仕事だと思います」
「協賛セクションのスタッフの方は、皆さん、自ら営業を買って出るだけあって、積極的で前向きなので、一緒に仕事をしていて楽しいです」
オシャレな外資系企業を回って、キャリア・ウーマンの気分…あぁ、そう言えばそれも私が抱いていたイメージ(笑)。でも、そうした外面 的な雰囲気だけでできるほど甘いお仕事ではないことは野宮さんの話からよぉ〜く分かります。自分がL&G映画祭の一 つの「顔」になるということ、それはむしろ自分自身が映画祭をどう捉え、どうコミットしているかという内面 を問われることなのかもしれません。そして、その「顔」がつとまっているのも、 野宮さんが今年のそして今後の映画祭に対する自分なりの考えをしっかりと持っているからなのだと思います。
「レズビアンやゲイ(あと、ほかのセクシュアル・マイノリティ) が、ただの観客として見にくるだけではなく、イベントとして 『一緒に楽しむことができる』ような映画祭であってほしいし、 できるだけそうしたいと思います。一般の人にアピールするようなステイタスやクォリティもある程度必要ですが、それだけを追 求したら、ほかの商業的な映画祭と変わらなくなってしまうよう な気もするし…。皆に『自分たちの映画祭』だと思ってもらえるような映画祭にしたいですね」

…と、いつもならこの辺でまとめに入るところだけれど、そうはいかないわ! (←キャラ転換)。協賛セクションにはもうひとつの顔、クラブパーティの企画・運営を行う別 動部隊のパーティセクションがあるの。L&G映画祭が誇る「クラブっ子」&超隠し玉 (笑)酒井さん、カモォ〜ン! 
第7回L&G映画祭のパンフレットの「あのショッキングかつ唯一 無二な表紙(マミー・ムー・シャングリラ様)をみて、メッチャクッチャ格好いい事している人がいるんだなぁー」とハートをわしづかみにされたことが映画祭との出会いだった酒井さん。その後流れ流れて(詳しい事情は割愛させていただきます)、今年の映画祭ではクラブパーティの開催を一手に引き受けています。
「プレパーティの開催には、皆様に映画祭の存在を知ってもらうってパブリシティの意味合いは当然あるんだけど、実はそれ以上に資金集めってのも大切な使命なんですよ」
「映画祭自体は非営利でも、実際に運営するにはでっかい銭が必要なのが現実。そこで、クラブパーティの入場料を映画祭の資金とさせてもらうんですが、ただお金を払うだけじゃ『寄付』なんで、お客様には入場料以上の楽しみも絶対に味わってもらえるよ う、頑張ってるわけです」
と、クラブパーティの「資金集め」としての役割もしっかりとふまえつつ、その一方で「L&G映画祭のパーティ」としてのこだわりも当然あります。
「僕は元々クラブっ子なんですが、昨年のLe grand balを手伝っ ているときから映画祭のプレゼンツするパーテ(って一体どういう物が相応しいんだろうって事をずっと考えていたんですよ。で、その相応しい物ってのが多分映画祭のパーティのウリなんだと思うんですよ」
「で、無い味噌絞りきって、考えた結果はこんなフレーズでした。 『今の誰のためでもないパーティ』」
「『今』僕たちが必要としているパーティってのは十分に多種多様のパーティが有るわけで、そんな二番煎じなパーティを改めて映画祭がプレゼンツする必要性なんて全くないわけで、やっぱり 『次の』自分たちが必要とするパーティを何処よりも早く提示す るのが、映画祭だと思うので・・・・」
そして、そんな酒井さんが無い味噌(笑)絞って考えているパー ティは、L&G映画祭と同様に多くの方々の協力なくしては成り立 ちません。
「(クラブパーティを)企画する上で、自分に律すること以上に大切なことがあって、それは映画祭が多くの人の善意で成り立っていると言う事実です」。
「いつも映画祭のパーティには超豪華な面々に出ていただいてい る事は皆さんも十分知っていると思うけど、そんな超豪華な方々に出て頂くってことは当然、超豪華な予算が必要なわけで・・・ そんなことは、まず無理です。でもそんな豪華な一晩を皆様に提供できるのは出演者の方々が協力してくださっているから。本当にありがたい話ですね。て、訳で、出演される方はもちろん、されない方も当然含めた先輩方に対しての礼儀ってのは大切です。 そしてこの場を借りて先輩方へ、失礼ばっかりですみません!」
L&G映画祭スタッフだけでなく、外部のさまざまな関係者の方々 の善意と熱意で作られていく映画祭プレゼンツのクラブパーティ。 一つのフロアに多くの人達が集まって音楽とダンスの熱狂と興奮と感激を分かち合うという意味で、それは映画祭の資金集めとい う役割を越えて、映画祭のもとに人と人とをつなぐという重要な役割も果 たしているのかもしれません。
そ・し・て、忘れちゃいけない、L&G映画祭がお送りする今年のクラブパーティ、その第1弾「Le grand bal」のお知らせ! 
「今年はマジですごいっす。映画祭じゃなきゃ実現できない凄いことになりました。石野卓球が初めて、ゲイナイトで回します。 お出迎えはおなじみENVY&RINDAの美人DJ! そしてもちろん東京中のドラァグクィーンにゴーゴーボーイ。ゴールドフィンガーからボンドガールズもやってきて、マジでヤバイです。音楽のジャンルの壁も、パーティのジャンルの壁も『楽しく踊る』って言葉の元に集結します。はっきり言って二度と無いです」
石野卓球がゲイナイトで〜!! きゃ〜っ!! もう、空前絶後、 前代未聞、酒池肉林、無我夢中、一攫千金、旭日昇天、百花繚乱、色即是空…えぇっと、とにかくもう、筆舌に尽くし難いこと 山の如しなパーティになること間違いなし! 来てっ! 来るの よっ! 来なさいっ! 
ホモ・エコノミカスがホモ・ルーデンス(遊ぶ人)に化ける一夜 をぜひご一緒にっ!

(井上 澄)

「代表のヒトコト」

山平です。お金は大切です。世の中、何をするにもお金がかかります。 「高度資本主義社会だ」って本文では書いてあるけど、確かに現代は、 大企業が一つの国家よりも大きなお金を動かすような時代。
「お金より大切なことがある」ってみんな言うけど、発展途上国なんか見ると、「お金あっての幸せだ」って思わずにいられません。でもそれは別 の話。とにかくこれからは、企業のように、NPOやNGOが重要な役割を持つようになると言われて、非営利団体やボランティアが注目を集めているようです。
我々映画祭スタッフも、みんな無償で働いています。バランスは難しいけど、仕事をしながら、自分が出来ることをして、何かお金じゃないものを得ているのだと思います。 映画祭まであと3ヶ月弱です。作品も決まり、パンフレットももうすぐ出来上がります。映画祭が楽しみです。

(山平宙音←実は商学部)

(2001/5/04更新)

Le Grand Bal オフィシャルページこちら

第1回 事務局の代表を決めよう!
第2回 人を集めよう!
第3回 上映作品を決めよう!
第4回 宣伝をしよう!

 

backtop