(2001/6/5)

「夏だ! ビーチだ! スリラーだ!」
プログラミングの主犯、川口隆夫がナビゲートする今年のツボ

 
ふ〜っ、毎年そうだけど、作品選定は今回も苦しみました。苦しみの大きかった順に“ツボ”をご紹介いたしましょうか。まず作品解説を書いてて気付いたのは「**年、どこどこ…」という書き出しの時代ものが目立つこと。  

解説にはないけどオープニングの「サイコ・ビーチ・パーティー」は設定が1962年のマリブ・ビーチ。夏だ、ビーチだ、スリラーだ! の三拍子揃って豪華な幕開けです。  
クロージングの「逃走のレクイエム」は1965年の南米が舞台。原題(“燃える札束 ”)の通り燃え上がるフィナーレはアルモドバルの「欲望の法則」を彷彿とさせて、やりたかったんだよね、こういうの。  
『スペイン特集』では30〜40年代スペインの「エル・マール〜海と殉教〜」。研ぎ澄まされた映像美が、物語は痛々しいのに魂の洗われるような感動を与えてくれる。 もうひとつのスペイン作品「第二の皮膚」は今年のアカデミー賞ノミネート、ハビエル・バルデム(「夜になるまえに(Before the Night Falls)」)主演。キューバの同性愛者強制収容所を取材したドキュメンタリー「猥褻(わいせつ)行為」は20年前の作品でパリの倉庫に埋もれていたプリントを掘り出しての絶対必見作品です。  

ボクのイチオシ長編はまず、1963年のモントリオールが舞台の「セット・ミー・フリー」。主人公の少女の決してメゲない強さと優しさが感動的。それから「夏の終わり」は、フランス人ってどうしていつも恋愛と悲しみを結びつけちゃうんだろうと思うけど、やっぱりステキ。  
現代物ではアメリカ2本。ビアン長編「スパイシー・ポップコーン」はインド系米人家族の話。カミングアウトで苦しむんじゃなくて、ビアンの恋人もいる娘が不妊の姉の子供を産んであげるっていう現代的なテーマ。シリアスかと思ったら、結構笑えて元気の出る映画です。  
土曜の夜の「ブロークンハーツ・クラブ」はウエスト・ハリウッドの脳天気でセクシーな典型的ゲイ・ライフ。スパイラルでのパーティーも合わせてクィア・ライフを満喫しよう。  

怪談・美少女系なら韓国の女子高を舞台に大ポルターガイスト大会の「メメント・ モリ」。韓国ファンは若手短編を揃えた『コリアン・ランダム』もお見逃しなく。平日昼間が厳しい人は「メメント・モリ」の前にロビー上映でどうぞ。  

戦争とかもあってなかなか行けないイスラエル。でもこの『イスラエル特集』を見たらすごく行きたくなった。同国のトップTVディレクター、エイタン・フックスによる3作(そのうち2作はボーイズ短編集にて上映)は、軍隊と宗教、マチスモというこの国の実はとても明るい若者の日常を見せてくれる。  

日本だって、今年レズビアンによるレズビアンの初のテレビドラマ「シュガー スイート」が放映される。そのプレミア上映をみんなで祝おう。ゲイ作品では“薔薇族映画”の「僕は恋に夢中」。上野世界傑作劇場でも「こんな面 白いのやってるんだ」って目からウロコ。同時上映はイメージフォーラム映画祭でも好評の「ファスナーと乳房 -L&G映画祭特別 版-」。新しい才能の登場です。

そして、短編集。ボーイズ2つにガールズ1つ、そして『爆笑アニメ短編集』。どれも見応えあるけれど、特に『ガールズ短編集』は力作揃いで絶対満足。

全18プログラム、45作品。全部見てもハズレなし。今年もスパイラルホールでお会いしましょう。あ、くれぐれもチケットはお早めに。

 

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