98年度映画祭のまとめ | 有朋自遠方来、不亦楽也 | 98年度上映作品及び監督インタヴュー

有朋自遠方来、不亦楽也

by 川口隆夫

いらっしゃい。7回目の今年は2週末6日間、会場も同じスパイラルながら3Fのホ−ルに6Fのル−ムを加え、もちろんQFF主催で大阪でも開催。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭はますます大胆に、やります、今年も!

今回のラインナップは編集を終えたばかりの最新作から、フィルム・ライブラリ−から引っ張り出したショ−トまで世界15カ国全80(???)作品、23プログラム! 昨年の山形国際ドキュメンタリ−映画祭で特別上映されたヴェルナ−・シュレ−タ−のオペラドキュメンタリ−「愛の破片(かけら)」、カンヌ出品に際し出国停止を受けたツァン・ユアン監督の中国初のゲイフィルム「東宮西宮」の2本(日本配給:セテラ・インタ−ナショナル、東北新社)の特別プレミア上映を始め、長編作品をズラリ9本。また、日本映画学校の卒業制作として発表され世界的にも評価の高い「ファザ−レス」や、フィリピン、台湾からもドキュメンタリ−が揃った。さらにブラジルのMIXフェスティバルとのコラボレ−ション、イギリスのゲイTV番組セレクション、フランスのHIV/AIDSをテーマにした短編を各プログラムの頭に上映するなど、これまでにないプロジェクトがめじろ押しなのも今回の特徴。国内作品コンテストもさらに多くの応募を期待しています。(まだ間に合う!作品提出締切は4月30日)

冒頭に何やらなつかしい漢文(高校で習ったの、覚えてる?)を引用した。食欲も知識欲も性欲も伸び盛りの十代がいろんな意味で暗中模索する年頃だとすれば、この映画祭もちょうどそんな時期にさしかかっている。アイデンティティも方向性も可能性が大きく開かれているからこそ迷う。セクシュアリティも揺れる。十代に限らずアイデンティティは常に揺れるもの。思い出は大人になって「あの頃はこうだったんだ」と解釈し直し受け入れることで今の「自分」の土台となる。揺れるからこそ単純なカテゴリ−ではくくれない「様々な愛の形」を、あらゆる角度から見つめようというのが今回の映画祭のテ−マだ。

昨年の9月にはNHKの「中学生日記」という番組でお互いを好きになる男の子2人の話が放映された(快挙!)が、そこに描かれているのは思い出ではない。十代の彼らがたった今直面している現実だ。9月と言えば、動くゲイとレズビアンの会(アカ−)が東京都・府中青年の家裁判に勝訴した。しかし、同じ時期に韓国では第1回ソウル・クィ−ア映画祭が開催初日に当局の命令で中止。アイデンティティは揺れる。揺れの幅を制限してはいけない。

92年に生まれてこの方、いろんな人に助けられよちよちやってきたが、今年はより強力なスポンサ−を得て規模・内容ともにぐんとアップ。もちろん、たくさんのボランティアの協力も欠かすことのできない大きな力だし、海外のプログラマ−やフェスティバルの協力を得て多くのプログラムが実現した。

孔子の思想を信奉しているわけではないが、遠くの友達がやって来るというのはやはり嬉しいもの。遠くから見にきてくれる人、多忙を押してきてくれる人、長い列に並んでフロアにあぐらも我慢してくれる人…。ありがとう。さらに、今年も国内外から監督やプログラマ−が駆け付け てくれる予定。そして、もうひとり、今は遠くに行ってしまった友人、古橋悌二。この映画祭の期間と重なってスパイラル1Fのアトリウムで彼のビデオインスタレ−ション作品「LOVERS」展(キャノン・ア−ト・ラボ企画)が開催される。「愛」をテ−マにしたこの美しい作品のそばにいられる偶然を、僕はとてもとても喜んでいる。


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