98年度映画祭のまとめ | 有朋自遠方来、不亦楽也 | 98年度上映作品及び監督インタヴュー

第7回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 結果報告

参加国15カ国、26プログラム、全70作品に8千人以上が集まる!

5月8日から24日の3週末、合計9日間にわたって東京および大阪で開催された第7回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭は、のべ8千人以上の観客を動員し、成功裡に幕を閉じました。

1992年に始った当映画祭は今年で7回目。特に今回は東京で会場が2つになった他、開催日数、上映プログラム数、参加国数の拡大につれて観客数も東京だけで昨年の4300を2200人以上も上回る6535名と、飛躍的に伸びました。
  
当映画祭はインディペンデントの非営利のフェスティバルで、主にボランティアスタッフにより運営されており、株式会社ワコールアートセンター(会場協力)を始め、各方面から大きな支援を受けて成立しています。今年は昨年に引き続きユナイティッド・アローズから大きな協賛を得た他、インターネット関連のアメリカ・オン・ライン・ジャパン、ジョイナック、スタジオ・スタッグ、そしてさらにはイベリア・スペイン航空、ブリティッシュ・カウンシルの協賛・提供を受け、1998年英国祭の正式参加行事としても認められました。また、参加各国の大使館からも後援協力を受けています。

内容的には「思春期」というひとつのテーマに貫かれたまとまりのあるプログラミングを実現することができました。特に、レズビアン女性の少女期の記憶を扱ったスー・フレデリック監督の「ハイド・アンド・シーク」をメインフィーチャーに、短編から長篇、ドキュメンタリーにいたるまで、アイデンティティ形成期の少年少女たちの歓びや困惑、初恋を描いた作品は、レズビアン&ゲイに限らず多くの観客の共感を得ることができました。また、これまで欧米に偏りがちだったラインナップも、日本を始め台湾中国などアジア各国の作品を紹介することができ、さらに「ブリティッシュ・ゲイTV」を始めとするオリジナルの特別企画、海外からのゲストを交えたトークやディスカッションは、観客と作家の間のコミュニケーションや様々な問題提起を促し大きな話題を呼びました。

レズビアン&ゲイを出発点とした芸術文化を紹介するアジア最大規模の映画祭として、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭は単なる映画の上映にとどまらず、様々な人々が出会い楽しむ場、オリジナル・プログラムの企画・情報発信を前提にした海外のフェスティバルやアーティストとのネットワーキング、情報交換の場として、まさに映画祭らしい映画祭となったと言えると思います。

+++ ハイライト +++

特別プレミア上映
中国初の本格的ゲイフィルムとして世界中で話題を集めている「東宮西宮」(日本配給:東北新社)、そしてニュージャーマンシネマの鬼才ヴェルナー・シュレーターのオペラドキュメンタリー「愛の破 片」(日本配給:セテラ・インターナショナル)の2本をロードショー公開に先立ちプレミア上映。

6プログラムで立ち見・満員!
今回の映画祭では上映に映画祭全体で6500名以上の観客を集め好評を博しましたが、特に「レザー・ジャケット・ラブストーリー」「東宮西宮」「フォー・シーズンズ」「フレネシ」「フル・スピード」「ハイド・アンド・シーク」では立ち見の出る大入りとなりました。また、6階のルーム・プログラムも全て客席が埋まり、特に「シャパニーズ・レズビアン・ビデオ」「HIV+の友達を持つあなたへ」など、日本の作品に対する関心が非常に高かったです。

スー・フレデリックと「ハイド・アンド・シーク」
レズビアン女性の少女の頃の思い出、成長過程、性の目覚めなどを現在の自分のアイデンティティとの関わりの中で捉え直した「ハイド・アンド・シーク」。この特別プログラムでは監督のスー・フレデリックを招聘し、作品について、ゲイ・レズビアン・フィルムの現在の状況について、語ってもらいました。作品上映後の質疑応答では「レズビアンの映画ということで、出演した子供の親たちと問題はなかったか」、「資金調達は困難だったか」、「60年代当時の人種問題の状況は今とどう違っていたのか」など、活発な質問がなされ、作品に対する観客の反応は非常に大きかったと思います。

「ブリティッシュ・ゲイTV」(「英国祭98」正式参加プログラム)
イギリスの全国系テレビ局チャンネル4はゲイ・レズビアン番組の全国放映を開始して今年で10年目を迎えました。ロンドンを拠点に活動する日本人映画監督中田統一氏に作品選定を依頼した「ブリティッシュ・ゲイTV」プログラムは、2日間にわたり6つの作品を紹介した。チャンネル4やBBC などで多くのレズビアン&ゲイの番組のディレクタを務めたクリス・クラーク女史をゲストに迎え、ブリティッシュ・ゲイTVの歴史と成果、現状について語ってもらいました。また、チャンネル4のレズビアン&ゲイ番組編成ディレクター、ジャッキー・ローレンス女史へのインタビューを録画・編集したビデオを映画祭最終プログラムにて追加上映。NHK番組「中学生日記」で初めて放映されたゲイ関連のエピソードを監督した高橋直治氏を交えて、イギリスと日本の違い、これからの課題など、ディスカッションを行いました。作品上映・ディスカッションともに多くの観客が詰め掛け、海外のレズビアン&ゲイ・メディアに対する観客の関心の高さが伺われました。

国内作品コンテスト
日本で製作された作品を対象に今年で4回目を迎えるコンテスト。今年は応募作品の中から8本を公開審査プログラムとして上映。アニメーションや劇映画、長篇ドキュメンタリーなど幅広いスタイルの作品が集まりました。ディレクターや評論家、ゲイのライターに加え、海外からのゲストも含めて合計6名の審査員の3時間近くに渡る討議の結果、日本のトランスジェンダーの人々を描いたドキュメンタリー「We Are Transgenders 〜性別を超えて、自分らしく生きる〜」(監督:尾川ルル)がグランプリに選ばれ、映画祭最終日の最終プログラムで表彰・上映されました。

ポスター展
これまで日本で紹介されたレズビアン&ゲイ映画のチラシやポスターを年代別にスパイラルホールのロビーに展示し、日本におけるレズビアン&ゲイ・メディアの発展の歴史を概しました。展示枚数は全部で80枚(???)を超え、年代別にその歴史を追うと同時に、日本の作品コーナーや面白い宣伝コピーなども人気を集めました。上映の合間などに多くの人が足を止め、例えば初公開当時とリバイバル時とのチラシを見比べてレズビアン&ゲイ映画の紹介のされ方が20年前と今とではどのように変わってきたかに、興味を示していたようです。

パーティー
昨年に引き続き、ユナイテッド・アローズの協賛で開催されたフェスティバル・パーティーは多くの人、様々な人で賑わいました。まず、1週目の土曜日に麻布のクラブ・ヴィヴィアンで行われた「ジューシー」で大きな盛り上がりを見せました。また2週目の土曜日にスパイラル1階のカフェで行われた「ル・グラン・バル」では500人を超える人々が集まり、ともにドラァグショーや歌、ダンスでフェスティバルにフェスト(祭り)としての華を添えました。ゲイやレズビアンだけでなく様々な人々が自由に自分らしい自分を表現することのできる、ミックス度の高いリラックスした雰囲気は、当映画祭ならではのパーティーとなりました。

ゲスト
上映作品の監督やプログラムキュレータなど海外からのゲストが合計8名来日。作品に対するコメントや質議応答などを通じて観客の作品理解に大きく貢献した他、海外とのネットワークが一段と強化され、優れた作品をより多く日本に紹介するため、そして日本の作品を海外に広く紹介していくための土台を築くことができました。


【データ】
東京  1998年5月7日〜10日、15日〜17日 
 スパイラルホール(3F)、スパイラルルーム(6F)
大阪 1998年5月22日〜24日
 梅田シネマワイズ
主催 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭運営委員会 
 大阪: QFF
作品数 70
プログラム数 26
会場数 3箇所(東京:2、大阪1)
観客動員数 合計7767名 
      (東京:メインのホール会場で5913名、ルーム会場で654名、大阪は1200名)
協賛 ユナイテッド・アローズ、アメリカ・オン・ライン・ジャパン、ジョイナック、
   ガーヴィ/スタジオ・スタッグ、ブリテッシュ・カウンシル(英国祭)、イベリア航空
後援 スペイン大使館、カナダ大使館、フランス大使館、ノルウェー大使館、
    ブラジル領事館、イスラエル大使館
会場協力 スパイラル/ワコール・アートセンター
来日ゲスト
・ミッキー・チェン(「本当のウェディング・バンケット」監督、台湾)
・クリス・クラーク(「ブリティッシュ・ゲイ・TV」レクチャラー、イギリス)
・アンドレ・フィッシャー(「ブラジル・ブラジル」プログラム・キュレータ、
 MIX ブラジルフェスティバル・ディレクタ、ブラジル)
・スー・フレデリック(「ハイド・アンド・シーク」監督、アメリカ)
・シャリ・フリロー(「骨はビリビリ/レズビアン短編集」プログラム・キュレータ、アメリカ)
・アルフォンソ・アルバセーテ、ベアトリス・デ・ラ・ガンダラ(「フレネシ」監督 およびプロデューサ、スペイン)
・ハンス・シャイルル(「ダンディ・ダスト」監督、イギリス)
・エリック・シルプ(「フォー・シーズンズ/ヨーロッパ・ゲイ短編集」プログラム・キュレータ、イギリス)

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